2021 Fiscal Year Research-status Report
統合自然地理学的研究による地盤災害・豪雨災害の危険度評価とハザードマップの検証
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20K01140
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
青山 雅史 群馬大学, 教育学部, 准教授 (30724744)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 災害碑 / 水害 / 1947年カスリーン台風 / 雹霜害 / 養蚕業 / 養蚕信仰 / 群馬県南部 |
Outline of Annual Research Achievements |
群馬県南部およびその周辺地域における近世以降の歴史災害について、特に自然災害に関する碑文が刻まれた石造物(災害碑)を対象とした研究を進めた。文献調査と現地踏査により、本地域において数多くの災害碑を認定することができた。本地域における災害碑の特徴として、水害(洪水と土砂災害)や天明浅間山噴火に起因する火山泥流に関するものが多いことに加え、幕末から明治期にかけて発生した降霜害や降雹害に関するものが多く存在することがあげられた。赤城山麓の河川沿いには1947年カスリーン台風に関連した災害碑が多く分布している。土石流被害が大きかった河川流域では慰霊・供養碑に加え、農地や用水路復旧を記念した災害碑(復旧記念碑)が多く分布する。1935年水害碑は碓氷川、烏川流域に多く分布し、1910年水害碑は碓氷川、烏川下流域、利根川流域の千代田町などに分布していた。江戸後期の水害碑は利根川流域の千代田町や明和町に建立されており、堤防決壊区間長や浸水深、金銭的援助を地域に施した人物に対する顕彰などが刻まれた石碑が確認された。雹害碑と霜害碑は江戸末期から昭和初期にかけて建立されており、養蚕が盛んであった時期に流布されていた養蚕信仰とも関係している。特に、1887(明治20)年の雹害、1893(明治26)年の霜害により、当時養蚕が盛んであった地域に数多く建立されていた。それらの碑文には、降雹や降霜により桑の葉が枯死し、桑の葉を飼料とする蚕の飼養が困難となり、蚕の亡骸を神社境内等に埋葬した旨が刻まれていた。当時の明治政府による窮民救済制度「備荒儲畜法」により、それらの雹害や霜害の被災窮民に対し多額の支出があったことが備荒儲畜金の災害種目別支出額を記録した群馬県統計書などに記されており、地域社会が被ったダメージが甚大であったことを窺い知ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による「緊急事態宣言」等の発出により、当初予定していた県外での現地調査ができなかったことによる。ただし、群馬県内における調査研究については、当初予定以上の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
群馬県内の災害碑を手掛かりとした歴史災害に関する調査研究を引き続き進めていく。現時点では未調査の群馬県北部についても調査を進め、災害碑や被災教訓などに関する情報の収集を行っていく。1947年カスリーン台風に関する浸水域については空中写真判読とGISによる解析作業による検討を進め、現在公開されている水害ハザードマップの妥当性の検証を進めたい。群馬県内における雹霜害に関する文献調査も進め、それによる地域社会への影響について明らかにする。これまでの調査研究により得られた群馬県内の歴史災害に関する情報のデータベース化、インベントリーの作成などを行い、多くの人々が容易にアクセスできるホームページ等ウェブでの公開を進めることで研究成果を社会に還元し、地域防災に貢献していく。 液状化リスクに関する調査研究としては、おもに関東平野を対象として、文献調査や災害碑調査による液状化発生履歴の検討、過去の空中写真や地形図、古地図など多種の地理空間情報を用いたGIS解析による土地履歴調査に加え、過去の土地条件に関する史料分析、土地履歴に関する現地住民への聞き取り調査なども実施し、それらにより得られた情報を統合するかたちで液状化リスクの検討を進めていく。とくに、人為的土地改変地について重点的に調査を行い、UAV-SfM多視点ステレオ写真測量による地形変化量の調査を行い、液状化や地すべり等の脆弱性に関する評価を進めたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による「緊急事態宣言」発出等の影響により、群馬県外での現地調査を一部実施延期としたことによる。
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