2021 Fiscal Year Research-status Report
Sustainability of land use for deceased in East Asian metropolitan areas
Project/Area Number |
20K01159
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
土居 晴洋 大分大学, 教育学部, 教授 (40197992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南埜 猛 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (20273815) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東アジア / 地形図 / 土地資源 / 文化 / 価値観 / 政策 / SDGs |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度に引き続き新型コロナウイルス感染症拡大に伴い,年度後半から国内出張は可能となったものの,研究代表者(土居)・分担者(南埜)ともに令和3年度に予定していた中国・台湾への資料収集等を目的とする出張を行うことができなかった。令和3年度は次の2点に関して研究を進めた。なお,分担者である南埜が12月に病気により死去した。 これに伴い,南埜が収集,考察を進めていた台湾に関する資料を土居が引き継ぐこととした。 (1)日本について厚生労働省が公表する『衛生行政報告例』(昭和10年代は『衛生年報』)について,昭和12年以降の死亡者数,墓地数に関するページの複写を行った。これをもとに,都道府県単位の死亡数と墓地数の経年的推移のデータを整備し,20世紀半ば以降の都道府県単位の動向を分析した。また,都市計画や文化史学等の学術雑誌に掲載された論文の収集を行い,主として昭和期以降の日本の葬送文化や墓園整備に関する研究動向を整理した。 (2)ミクロレベルにおける東京都市圏の墓地の空間的分布の推移に関する資料のデータ化を進めた。現代においては,「住宅地図」(ゼンリン)をもとに,墓地記号と土地利用界をGIS上にポリゴンデータとして記録を進めており,都内6区と東京都・埼玉県の7市を終えている。一方,明治末(1910年前後)の旧1万分の1地形図を18図幅購入し,同じく墓地記号と土地利用界のGIS上でのデータ化を進めている。 なお,中国と台湾に関しては,渡航が困難であったことと,分担者(南埜)の死去に伴い,実質的に研究の進展には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は日本(東京都市圏)と中国(広州都市圏)を主に土居が,台湾(台北都市圏)を南埜が主に担当している。令和2年度に引き続き,外国出張が実質的に不可能であった。また,年度後半には国内出張は可能となったものの,関係者に対する対面による聞き取り調査は困難であり,国会図書館所蔵資料の収集に重点を置かざるを得なかった。 また,分担者(南埜)が進めていた台湾に関する研究は,令和3年度中を目処に論文としての投稿を目指していたが,死去に伴い具体的な執筆に至らなかった。南埜が収集していた資料等の大半は土居が引き継ぐことができたので,それらをもとに令和4年度中の論文執筆を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
渡航が可能となれば,令和4年度は広州市,台北市における現地調査を実施し,葬送文化の伝統や現代的様相に関する文献等資料,さらに行政機関等では墓地政策や法令,統計等の資料収集を行う。日本については,東京都庁などの保健衛生関係機関において統計データ等を収集する。また,令和2年度に着手した旧版地形図などを基礎とした,GISによる経年的な墓地の地図化作業を継続する。 令和4年度は日中台の墓地の時空間分析の考察を精緻化させるために,風水思想など市民の文化的価値観との関係を考察するために,GISを用いて標高DEMや都市圏内の立地の特性などとの関連を考察する。現地調査においては,3都市圏において,公共および民間の墓園に関する聞き取り調査を行い,立地の経緯や遺骨等の収容形態や収容量の変遷に関する資料を入手する。これらを通して,日本にあっては自治体や宗教法人など,台湾では共同墓地や軍人墓地など,墓地の開発や整備の主体となる組織や類型による意志決定のメカニズムや要因の考察を行いたい。 なお,新型コロナウイルス感染症の感染状況の推移によって,令和4年度中に現地調査を実施することが困難と判断される場合には,当初の研究対象地域については屋内作業で可能な範囲の研究を進めると同時に,所在県・近隣府県において,墓地開発・整備に関する行政機関や法人などへの聞き取り調査を行うことも検討する。 最終年度(令和5年度)は補足調査のうえで,最終的な取りまとめ作業と並行して,人口増減の予測や社会経済情勢の動向に照らして,今後どのような課題や問題が発生するのかなど,市民の安寧を実現する「死後の土地利用」の持続可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大によって,国内外の資料収集や聞き取り調査などの現地調査を実施することが困難であったことが,次年度使用額が生じた理由である。特に2年連続で外国出張が不可能であったことが,大幅な旅費残の理由である。 本研究課題においては,単に統計データの分析やGISを用いた時空間分析だけでは研究目的を達成することは困難であり,3都市それぞれの葬送に関する文化や価値観,政策的な対応などとの関連を考察することが重要であり,そのような資料や情報を得るためには,現地調査が不可欠である。 中国・台湾にあっては,日本からの入国制限の緩和を待ち,研究対象地域へ渡航することで,当初の計画にしたがって,資料収集や行政機関等への聞き取り調査を実施する。国内にあっては,東京都市圏の明治末期と現在の墓地の空間的広がりを現地観察によって確認するとともに,関係者・関係機関への聞き取り調査を進める。次年度使用額の多くは,これら現地調査のための旅費や資料購入費などに当てる予定である。
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