2020 Fiscal Year Research-status Report
医療サービスの立地と需給の地域構造に関する基礎的研究
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20K01162
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
加藤 幸治 国士舘大学, 文学部, 教授 (10294498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鍬塚 賢太郎 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (40346466)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地域間格差 / 医療サービス / 二次医療圏 / 面積 / 密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で取り組む課題,すなわち①医療サービスのマクロスケール(全国的)空間構造の把握,②医療サービスのミクロスケール(地域内)格差とその差違の把握,のうち本年度は前者の医療サービスのマクロスケール(全国的)の空間構造について,とりわけ,その地域間格差における分析に注力した.具体的には主として二次医療圏を単位にして,『医療施設調査』や『医師・歯科医師・薬剤師調査』を用いて,医療機関と医師の「密度」について検討し,その地域間格差を明らかにした. 「医療の西高東低」が,単位人口(10万人)当たりの医師数などの分析から認められることはなかば常識として言われてきたが,単位面積当たり,とりわけ可住地面積ベースの医師数など「密度」の観点からみると,「西高東低」以上に,むしろ大都市とそれ以外の地域,とりわけ縁辺部との格差が大きいことが明らかとなった.しかもその差は数倍といったレベルではなく,数百倍レベルにも及ぶ差であった.単位人口当たりを指標にする限りは「隠蔽」されていた地域間格差が単位面積当たりを指標にすることで浮かび上がってきた.こうした医療サービスへの物理的アクセスの差違は「生死を決定する因子として最も重要な」時間の差に直結するものであるから,これを軽々に見過ごすことはできない. これらは地理学的にはごく基礎的・簡易的な方法による分析であるものの,医療サービスの地域間格差をみる上で,こうした方法が有効であることを示すことができたことは,現実問題への言及のみにとどまらず,地理学の有効性を主張できる点から,学問的にも意義深いものだと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎的分析を行った上で,その意義やさらなる探求のポイント等を研究代表者・研究分担者・研究協力者の間で議論・討議してブラッシュアップを重ねていくことを予定していた.しかしながら,コロナ禍で対面の研究打ち合わせ等ができず,リモートでの討議の準備も遅れ,また,そもそもデータ・参照資料も多いため,リモート討議はままならないこともあり,予定よりも進捗が遅れ気味である点は否めない.
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Strategy for Future Research Activity |
医療サービスのマクロスケール(全国的)の空間構造についてGISなどを用いて,より深めていくとともに,それらも利用した経済地理学的観点からの病院の経営分析にもつなげていく予定である. 前者についてはすでに取り組んでいるところである.研究代表者・研究分担者・研究協力者の間で,議論・討議を通じてブラッシュアップを図っていくという,本研究において研究組織を組んだ意義・目的を生かして,前者について深めていきたい.そのためのリモート環境の整備やそのための支出も考えている. 後者については資料の検討等は行ってきており,それらデータの入力・分析等を,アルバイト等も利用しながら,着実に進めていきたい.
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって,予定していた研究打ち合わせ・研究会等が開催できなかったため.
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Research Products
(1 results)