2020 Fiscal Year Research-status Report
近代日本におけるキリスト教会の立地と都市形成の相互関係に関する地理学的研究
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20K01166
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
麻生 将 佛教大学, 公私立大学の部局等, 非常勤講師 (00707771)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プロテスタント / 教会 / 都市 / 基督教年鑑 / 写真資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の実績は次の通りである。 近代日本の主要都市におけるプロテスタント教会の立地状況とその変遷について、『基督教年鑑』を用いて大正期から昭和戦前期(1916年~1940年)の主要都市における教会の立地状況の変化を5年ごとに地図化し、時系列的な教会立地の空間データの構築作業を行った。この一連の作業を通じて、各都市内部の細かい立地状況とその変遷を検討することが可能になった。また、プロテスタントの各教団の詳細な立地状況も検討可能になった。そして、各教団の都市部での教会立地の戦略、言い換えればキリスト教伝道の空間的戦略が都市内部の空間の変化(市街地の拡大や再開発など)と関連する可能性が示された。 すなわち、本研究の意義の二本柱である①近代日本の他の都市における教会の立地状況とその動態的変化(定量的研究)と、②都市空間内部の社会経済的構造と教会立地との詳細な相互関係(定性的研究)の解明に向けての道筋が少しずつ示されてきたと考えられる。 ①に関する研究成果として、2本科研申請以前にすでに作成した京都市のデータベースにくわえ大阪市と神戸市のデータベースを基に、2021年3月のキリスト教史学会にてその成果の一部を発表した。 ②に関しては本科研申請の対象である近代日本の大都市の事例研究の試験的な分析として、近代の地方都市におけるキリスト教会関係の写真資料の分析を岐阜県大垣市と鹿児島県奄美大島を事例に行い、2020年9月のキリスト教史学会と同年10月の日本地理学会秋季大会にて発表した。くわえて、京都市を事例に近代以前の都市と教会の関係性について中世から近世を対象に地誌書や宣教師の日記などを用いて分析を行い、その成果をまとめた論文が2020年度発行の雑誌に掲載決定した。 2021年度はこれらの発表成果を発展させ、大都市における教会と都市空間の関係、教会と都市社会の関係について分析を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では①京都市にくわえて大阪市と神戸市、札幌市と名古屋市のデータベースを作成し、②これら4都市での現地調査を実施し、③各都市の比較考察を学会などで発表する、という予定であった。実際、①は京都市と大阪市、神戸市のデータベースは完成し、③は2021年3月のキリスト教史学会で発表し、発表内容を元に原稿を『キリスト教史学』に投稿するべく執筆中である。その一方、名古屋市と札幌市のデータベース作成が途中である。その理由は『基督教年鑑』の復刻版が絶版であることが判明したため、国立国会図書館デジタルコレクションをはじめ図書館所蔵のものを使用せざるを得ないことである。そして、②については新型コロナウイルスの影響により、現地調査が不可能であるため、戦前期から続く教会所蔵の一次資料の閲覧や関係者からの聞き取り調査を実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
名古屋市と札幌市にくわえ、2021年度の計画では福岡市と仙台市のデータベース作成も予定している。現地調査は新型コロナウイルスの影響で引き続き実施が極めて困難になると予想されるため、申請者が居住する京都市内の図書館や資料館、国立国会図書館デジタルコレクションなどを活用しながら教会関係の史資料の閲覧を進めていく。また、『基督教年鑑』についても可能な限り近隣の図書館や国立国会図書館デジタルコレクションを活用しながらデータベースを作成していきたい。 そして、作成したデータベースをもとに地図化作業を進め、都市間の比較考察を地理学およびキリスト教史学などの学会で発表し、論文執筆を継続していきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは次の二つの理由による。 ①2020年度中に購入を予定していた『基督教年鑑』の復刻版が絶版であることが判明したため。プロテスタント教会の立地状況の経年変化を検討するためには隔年発行されていた『基督教年鑑』の1916年版~1940年版の全巻を通時的に検討する必要がある。しかしながら前述のように『基督教年鑑』の復刻版が絶版の上,古本でも部分的な入手に限定されることから、『基督教年鑑』全巻の購入のための予算40万円を執行できなかった。 ②2020年度中に京都市以外の都市で現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの流行により、実施不可となったことにくわえ、学会発表が全てオンライン開催になったため、当初予定していた交通費と宿泊費を執行できなかった。 今年度は『基督教年鑑』の複写にくわえ、各教会関係資料および関連出版物といった、分析に必要不可欠な史資料の複写や購入を実施する。また、本研究に関連する先行研究の書籍の購入も進めていく。
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Research Products
(4 results)