2023 Fiscal Year Research-status Report
バンクーバー大都市圏の日本人ガーディナー:技術革新にともなう庭園・造園業の展開
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20K01181
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河原 典史 立命館大学, 文学部, 教授 (60278489)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カナダ / 日本庭園 / 技術導入 / 雇用システム / ボス=ヘルパー関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブリティッシュ・コロンビア州(以下、B.C州)の日本人ガーディナー史は、大きく4期に分かれる。第二次大戦後の1947年から1960年代初頭までは、第3期に位置づけられる。第2期に庭園業を経験したボス(親方・経営者)のもと、二世・帰加二世がヘルパー(助手・雇用者)として活躍するこの時期は、日系ガーディナーの再編期といえる。そして、二世・帰加二世のヘルパーが独立するとともに、1970年代以降には、新一世とも呼ばれる戦後の新移民を迎えるようになる。彼らの多くが庭園業だけでなく、造園業も行なうこの時期は、4期にあたる。 戦後の移住者は農業技術者であることが多かった。彼らは日本または研修先のアメリカなどで、先進的な技術を持ち込んだ。例えば1969年にエッジャー、すなわち庭の隅のところに生えている草を機械で切り取っていくもの。1972年にはウィーロイーターという庭隅のはさみ作業からの開放がこれらによって行われるようになった。それまで3名1組がトラックに乗り、草刈りをはじめ、角のところはハサミで作業を行っていた。しかしこの機械の導入により、手作業から解放されると同時に、1組が3名から2名と変わるようになっていった。そして1969年に大きな機械がアメリカから導入されるようになる。それはカリフォルニアトリマーと呼ばれるものである。それまでは雨天では芝刈りは効率よく行うことができなかったが、この回転式の草刈機の導入によって雨天でも使用が可能になった。それによって仕事が安定し、さらにヘルパーの導入も促すようになったのである。 さらに、日本風庭園に必要な石や黒松、竹などの石材業・養樹業などが展開するようになる。とりわけ、イタリア系カナダ人が広げていった石材業は、中国から安価な石燈籠などが輸入されるようになっていった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、カナダへの渡航が制限されていた。2024年2月に、この科研期間中にはじめて渡加し、現地調査を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年8月と2025年2月にカナダでの現地調査を予定している。そこでは、バンクーバー日系ガーディナーズ協会での資料収取や聞き取り調査を実施したい。最終年を迎え、ガーディナーズ協会の通史の執筆に取り組む。
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Causes of Carryover |
2023年度夏季に予定していた長期間のカナダ調査が延期となり、旅費の執行が叶わなかった。そのため、次年度の2024年度での使用へ、繰り越すことになった。2024年度では、8月末と2月末の2回のカナダ調査を計画している。
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