2020 Fiscal Year Research-status Report
Inter-island Networking of the Pukapuka Atoll Communities: A Study by Multi-sited Approach
Project/Area Number |
20K01190
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
深山 直子 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (90588451)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
棚橋 訓 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50217098)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | クック諸島・プカプカ環礁 / NZ・オークランド / 移民コミュニティ / 社会組織 / インターアイランド・ネットワーク / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、クック諸島・ラロトンガ島とNZ・オークランドにおける、2つのプカプカ人移民コミュニティを分析対象としている。両コミュニティと故郷のプカプカ環礁社会が、文化再活性化プロジェクトと環礁の災害復興支援という出来事において協働する実態を描き出すことを通じて、リスク社会におけるレジリエンスの所在としてインターアイランド・ネットワークを考察することを、その目的としている。 今年度は日本国内において、これまでに代表者と分担者がプカプカおよびオークランドにおける現地調査で得たデータの整理と分析、加えて文献史資料やインターネット上のデータの整理と分析を行い、3回のオンライン研究会にて議論を深めた。 その結果まず、プカプカ環礁社会においては、限られた資源を維持・管理するために、環礁全体、村落、親族集団、墓地共有集団といった多次元での社会組織が発達してきたことを指摘した。さらに、2005年に起きた巨大サイクロン災害によって資源と居住空間が甚大な被害を受けた際にも、そのような社会構造の重層性が合理的かつ包摂的な復興プロセスに寄与したことを確認した。次に、オークランドのプカプカ人移民コミュニティについて、1920年代以降の歴史的展開を粗描した上で、特に1990年代以降に焦点を絞り、教育振興、文化復興、経済活動を軸とした組織化と分裂の経緯を明らかにした。また、多民族が混在する都市的環境のなかで、移民がプカプカ人というアイデンティティを強化している一方で、環礁社会での各社会組織における成員権を、ソーシャル・セキュリティとして保持している側面があることを指摘した。今後は、環礁社会の社会構造と、オークランドそしてラロトンガ島の移民コミュニティの特質との関係性を、明らかにする必要がある。これらの成果の一部は、国内外のオンライン学会にて発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、クック諸島・ラロトンガ島とNZ・オークランドのプカプカ人移民コミュニティを対象とした、マルチサイテッド・フィールドワークを実施する計画であった。しかし、当初は予期していなかったCOVID-19問題の深刻化により、今年度はクック諸島とNZ、いずれへの渡航も不可能になり、加えて国内での移動や会合さえままならなくなった。そのため、既得の現地調査データの整理と分析、そして文献史資料やインターネット上のデータの整理と分析を行い、オンライン研究会やオンライン学会の機会に意見交換するということに終始した。その結果、プカプカ環礁社会とオークランドの移民コミュニティの特徴がより明確になり、インターアイランド・ネットワークを捉える際の問題の所在も浮き彫りとなった。しかしながら、新たにオリジナルな調査データを収集をすることに着手できていない以上、やや遅れていると評価せざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
翌年度以降は、クック諸島とNZへの渡航が可能になり次第、当初から計画している夏季のみならず、他の時期における渡航も検討し、より集中的に現地調査をする予定である。同時に、SNS上のデータ収集やオンライン・インタビュー調査など、オンライン調査の可能性も探るつもりである。その際には、COVID-19問題におけるインターアイランド・ネットワークの起動の可能性についても、検討したい。なお、翌年度も引き続き、現地調査が不可能であった場合には、改めて研究計画の変更を見直すつもりである。
|
Causes of Carryover |
今年度、クック諸島・ラロトンガ島とNZ・オークランドのプカプカ人移民コミュニティを対象に、フィールドワークを実施する計画であった。しかし、COVID-19問題の深刻化により不可能となったため、旅費が手付かずになり、現地の調査協力者のために使用予定であった人件費・謝金も、一部を除いて使用しなかった。翌年度は、クック諸島とNZへの渡航が可能になり次第、当初から計画している夏季のみならず、他の時期における渡航も検討し、より集中的に現地調査をする予定である。 本研究は具体的には、〈A〉移民コミュニティ形成過程、〈B〉移民コミュニティの平常時における特徴と機能、〈C〉インターアイランド・ネットワークの特徴と機能、を明らかにすることをその目的としている。翌年度の計画は、以下の通りである。 ①東京にて3回の研究会・打ち合わせ【代表・分担】。 ②夏季・冬季もしくは春季にラロトンガ島・オークランドにて現地調査。〈B〉について聞き取り調査・参与観察【代表】。〈C〉について聞き取り調査・参与観察【代表・分担】。③調査データの整理と分析・学会発表・論文の投稿【代表・分担】。
|