2021 Fiscal Year Research-status Report
Anthropology comes to our town!: for constructing digital anthropo-rium.
Project/Area Number |
20K01200
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
後藤 明 南山大学, 人文学部, 教授 (40205589)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人類学 / 民族学 / 考古学 / 天文学 / プラネタリウム / アイヌ民族 / 琉球・奄美 / ポリネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
アンソロポリウムとはエアドーム式プラネタリウムを使って、天文文化を紹介する人類学的ないし文化天文学的試みであるが、同時にドーム内に海底映像あるいは生活の場面などの画像ないし映像を投影することも可能である。それにより本プロジェクトではプラネタリウムドームをトータルな自然教育のツールとして使う試みを紹介する。なおアンソロポリウムとはアンソロポリジー(人類学)とプラネタリウムを組み合わせた造語である。 われわれが普段意識する星座は西欧起源の概念である。しかし世界あるいは日本だけでもそれとは異なった星座観や天文学があった。アンソロポリウムとは、このように文化を通した天文現象あるいは星空を紹介していく試みなのである。近年このような動きが盛んになり、国際天文学会でも天文教育と同時に文化天文学(cultural astronomy)あるいは文化の中の天文学(astronomy in culture)という範疇で盛んに議論がなされている。 プラネタリウムの建造や維持に費用がかかる。ここで目指しているのは費用のかかるプラネタリウムを建造するのではなく、地域の人々が望めば、こちらからエアドーム式の移動型プラネタリウムを運び、その中ではその土地の民俗知識や遺跡などからスタートする天体・自然映像である。このような各地で行う場合、重要なのは、地元の方々の参加を促すことである。そのため解説者に地元の方を使う、またドーム内で流すBGMや自然風景はできるかぎり地元のものを使うように工夫してきた。それにより人類学が社会においてより身近に、さらに地域の人が参加することで「人類学を使う」という実践的な研究教育活動を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は11月に鹿児島県喜界島での研究教育イベント「アンソロポリウム in 喜界島」ではエアドームを使って奄美喜界島とアイヌの星を比較する文化天文学イベントを喜界島サンゴ礁科学研究所と共催で実施した。そこでは従来の天体投影だけではなく、喜界島に伝わる「浦島物語」をイメージした海底映像(サンゴ礁科学研究所提供)することで「サンゴ礁から宇宙に飛び出す」というイメージを提供することができて好評だった。 また12月には喜界島での映像(解説音声やBGM含む)をエアドーム内で投影するというハイブリッド型のイベントを札幌のピリカコタンで実施した。 さらに1月には、2020年同様、映像をオンラインで視聴者に見てもらうイベント(アンソロポリウム 2022 in Nanzan)を学生解説によって行った。 このように昨年度は三回の文化天文学的イベントと異なる方法(対面、ハイブリッド、オンライン)を遂行することができて、昨今のコロナのような状況化に対応して柔軟に社会還元する実績を作ることができた。さらに本申請時に考えていた、天体投影以外に海底環境映像をドーム内に投影するということで、人々の生活感覚と環境をよりトータルに表現することができた。この意味で2021年度は予想以上に研究が進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、喜界島はエアドームの中に実際に映像を投影し、観客に直接お見せすることができた。一方、2021年度はOIST(沖縄科学技術大学院大学)で沖縄の星を中心に沖縄出身の解説者で実施予定であったが、オミクロン株の猛威があり、オンライン実施も考えたが、大学スタッフ自体が自宅ワークとなったために物理的に不可能となり、延期した。2022年度は何らかの形で実施したい。また昨年同様喜界島、また北海道のアイヌ民族の多い村落で、アイヌ語の解説などを交えたイベント実施の相談もあるので、実施することを目標のひとつとする。 さらに2021年度はサイエンスコミュニケーションを専攻ないし副専攻する日本各地の大学院生が喜界島および札幌のイベントでは協力をしてくれた。今年度は新たな試みとして、天体映像のプラン作りを最初から協力してもらうことで、申請者が過去10年培ってきたノウハウを伝授し、さらなる発展を目指したい。 2021年度は2020年度と同様、南山大学での企画を完全映像化(解説音声やBGMも乗せて)で、オンラインで配信することができた。さらに2021年12月には札幌のピリカコタンでエアドーム内に投影する映像に解説の声を乗せた映像を作り、エアドーム内で対面で観客にお見せするというハイブリッドで行った。 プラネタリウムドーム内は「3密」の典型であり、新型コロナの蔓延は決定的な打撃であった。しかし上記のように2021年度は三つの異なった形で市民に研究成果を還元することができた。新型コロナというマイナスの状況が、逆に、本申請の新たな可能性の開拓につながったといえる。今後はこのような経験をもとに、さまざな状況において、日本あるいは世界各地で同じような試みを実施していきたい。
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