2020 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological Study on the International Trade Using Cryptocurrency in Africa
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20K01202
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小川 さやか 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (40582656)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 電子マネー / 暗号通貨 / 貨幣論 / デジタルエスノグラフィ / 人類学 / タンザニア / 香港 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカ諸国では、先進諸国とは異なる背景からモバイルマネーや仮想/暗号通貨の受容が進展している。本研究では、アフリカ諸国における先進的な仮想/暗号通貨の受容/開発国であるケニアと、今後数年間で受容・開発が進むと予想されるタンザニアを事例に、アフリカの輸入商たちが既存の商慣行との折り合いをどのようにつけながら、モバイルマネーや仮想/暗号通貨を受け入れ、独自の経済文化を発展させているのかを実証的に明らかにすることを目的としている。それらを通じて、アフリカをはじめとする発展途上国におけるモバイルマネーや仮想/暗号通貨の可能性と潜在的な課題を析出するとともに、文化人類学における貨幣論の刷新を目指している。 2021年度は新型コロナ禍により海外調査が実施できなかったが、文献調査および日本国内のタンザニア人交易人に対する調査、およびWhatsApp等を利用した海外のタンザニア人たちへのオンライン聞き取り調査を通じて研究を展開した。まず、貨幣論に関する文献研究に従事し、アフリカ諸国における電子マネーと暗号通貨の利用状況に関する資料収集とデータ整理を実施した。また神奈川県で自転車輸出業を営むタンザニア人たちへの調査を実施した。他、オンラインで国際決済に関する聞き取り調査を実施した。『文化人類学のエッセンス』他3冊の論集に論文を寄稿し、総説・書評・社説・事典項目を執筆した。サントリー文化財団と信頼資本財団、プラットフォーム資本主義研究会、国際日本文化研究所の共同研究に参加し、本研究課題遂行のための貨幣や信用、負債、プラットフォーム資本主義等の先行研究を精査した。6月に、昨年度に公刊した『チョンキンマンションのボスは知っている』で第8回河合隼雄学芸賞と第51回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、20件以上の講演を実施。1月から日経新聞と朝日新聞で記事を連載、読売新聞で書評委員を務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2020年度にタンザニア及びケニアで暗号通貨の普及を担うブロックチェーン協会や現地通信会社、管轄省庁における資料収集と、担当者に対して暗号通貨の普及やサービスの利用に関する課題について聞き取り調査を実施する予定であった。しかし、新型コロナ禍によって海外調査自体が遂行できなかった。HP等に公開されている資料および文献研究によって可能な限り、アフリカ諸国での暗号通貨の普及や利用に関する資料収集とデータ整理を進めたが、現地に渡航しないと収集できない資料も多く、やや遅れている。この状況はしばらく継続すると予想されるが、昨年度にメールやSNS等を通じて現地通信会社の従業員や暗号通貨を利用する商人とコンタクトを取り、オンライン調査の可能性を模索してきた。次年度には調査を実施したいと希望しているが、新型コロナ禍の継続で依然として困難な場合には、オンライン調査および現地調査会社への調査代行の依頼も検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、東アフリカ諸国における暗号通貨の利用実態に関するフィールド調査をなるべく早期に実現したい。PCR検査やワクチン接種により渡航可能になれば、夏季休暇を利用してタンザニア人貿易人による暗号通貨の利用実態の調査を行う予定である。前年度に実施できなかった公文書の収集も同時並行で実施する。もしコロナ禍が継続することによりタンザニアでの調査実施が困難な場合には、香港やケニアなど入国可能になった国での暗号通貨の利用実態に関する調査を先に進める。2月と3月の春期休暇にも同様に暗号通貨の利用実態に関する調査を実施する。また計画通りに渡航ができた場合には、研究の遅れを取り戻すために調査助手を複数名雇用し、人海戦術で聞き取り調査を実施する。 次年度前半には、前年度までの文献研究の結果を踏まえて、共著論文集を信頼資本財団から出版予定であり、その執筆を行う。またミネルヴァ書房から『文化人類学入門』を編者として刊行予定であり、その編集と「交易と都市」の章の執筆を行う。さらに文化人類学の研究手法に関する単著を小学館から出版予定である。6月に東北大学で開催される「アジアとアフリカ間の人の移動」に関するシンポジウムでの登壇、11月に文化人類学会一般公開シンポジウムでの発表が決定している。夏季休暇で調査が実現したら、年度内に本研究課題に関する論文を『文化人類学』に投稿する。 もし次年度も新型コロナ禍を理由にいずれの国にも渡航ができない場合には、予め準備した質問票を用いた定量調査を現地調査会社に依頼するとともに、現地調査助手に暗号通貨の利用実態の動画撮影を依頼し、研究を進めることを計画している。
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Causes of Carryover |
本年度は科研費の主たる使用用途であった海外渡航費およびそこでの謝金(調査助手各国1名の雇用費およびインタビュー協力者謝金)は、新型コロナ禍により海外調査が不可能になったため、使用できなかった。次年度においてタンザニア・ケニアへの渡航が可能になった場合には、夏季休暇及び春期休暇の短期間の調査で成果を出すため、予め質問項目を準備し、現地調査助手を10名程度を雇用して対面式の聞き取り調査を人海戦術で実施し、暗号通貨・電子マネーの利用実態を明らかにする。そのため、調査助手雇用費及び調査協力謝金を多く使用する(10名×5万円)。また新型コロナ禍が継続し、渡航が依然として不可能な場合には、自身で可能な限りのオンライン調査を進めるとともに、現地調査会社に暗号通貨の利用実態に関する質問票調査を発注する(30万円×2か国)。また現地調査助手に利用実態に関する動画や写真撮影、参与観察等の調査代行を依頼する(5万円×3名×2か国)。それらのデータ整理に院生バイトを雇用する(5万円×2人)。その他、文献資料費の購入費や英文校閲費等は、計画通りに使用する。
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[Book] 都市科学事典2021
Author(s)
横浜国立大学都市科学部編(小川さやか)
Total Pages
1052
Publisher
春風社
ISBN
978-4861107344
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