2021 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological Study on the International Trade Using Cryptocurrency in Africa
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20K01202
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小川 さやか 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (40582656)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リープフロッグ型発展 / インフォーマル経済 / 電子マネー / ICT / ギグ・エコノミー / 東アフリカ / 香港 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アフリカ諸国における先進的な仮想/暗号通貨の受容/開発国であるケニアと、今後数年間で受容・開発が進むと予想されるタンザニアを事例に、アフリカの輸入商たちが既存の商慣行との折り合いをどのようにつけながら、モバイルマネーや仮想/暗号通貨を受け入れ、独自の経済文化を発展させているのかを実証的に明らかにすることを目的としている。 2021年度も新型コロナウイルス禍の影響で、東アフリカ諸国及び香港での調査を遂行できなかった。インフォーマル経済に関する文献調査を行ったり、SNSやリモート会議ツールを駆使して聞き取り調査を実施したりしたが、東アフリカにおける暗号通貨を利用した国際決済の実態に関して予定していた通りの成果は得られなかった。ただし、SNSやリモートでの調査等を通じて、ICTや電子マネーなどのテクノロジーの受容に伴ってインフォーマル経済が変容しつつあることが明らかになった。その成果である、インフォーマル経済のギグワーカー化や電子マネー等を通じた貿易活動の展開に関する論文を『ゲンロン』『季刊民族学』『地域開発』『Wired』等の雑誌で公表した。 いくつかの共同研究の成果を公刊した。住総研の共同研究の成果『住まいから問うシェアの未来』(学芸出版社)やアジア経済研究所の共同研究の成果International Trade of Secondhand Goods: Flow of Secondhand Goods, Actors and Environmental Impact(Palgrave)に論文を寄稿した。 その他、研究成果の社会的発信に努め、朝日新聞、日経新聞、『中央公論』等で連載をしたほか、読売新聞の読書委員として書評を担当した。朝日新聞で連載したコラムは、2022年度に行う連載とあわせて書籍化することが決定している。企業等での講演活動にも積極的に従事した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス禍の影響で、予定していた海外での調査が困難となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス禍に伴う入国規制が徐々に緩和されつつあり、2022年の夏季休暇および春期休暇には東アフリカ諸国への渡航を予定している。調査の遅れを補うため、必要に応じて調査補助員を同行した調査も検討している。万が一2022年度にも渡航できない場合には、現地調査会社に調査の代行を依頼することも検討している。 夏季休暇には、ケニアまたはタンザニア(各国の入国管理政策によって決定する)で暗号通貨の利用に関して既にオンラインで聞き取り調査をした商人の活動を参与観察する。また、新型コロナウイルス禍で、海外と国内の商人間の取引だけでなく、国内の地理的に離れた商取引もリモートで実施されるようになったことが明らかになっており、そこでの電子マネーや暗号通貨の利用についても聞き取り調査をする。春期休暇にも同様の調査を実施し、その成果を年度内に査読論文として投稿する。 加えて新型コロナウイルス禍で注目を浴びるようになったデジタル・エスノグラフィやハイパーメディアエスノグラフィの可能性に関しても研究を行い、インフォーマル経済を題材にしたマルチモーダルエスノグラフィを実験的に作成する。また、日本の企業で試みられているデザイン人類学の方法とあわせて、ビジネスとエスノグラフィの新しい関係をめぐる研究も展開する。その成果に関しても、年度内に査読論文に結実させたい。 2022年度には、デヴィッド・グレーバーの負債論に関する論集やタンザニアや香港での調査を基にしたエッセイ集が刊行予定である他、いくつかの論文集を準備中である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延により、予定していた海外渡航ができず、主として文献研究に切り替えたため、物品費が増加し、また渡航費の予算の繰り越しが生じた。2022年度には東アフリカ諸国での調査を予定しており、その際に効率的なデータ収集を行うため、調査補助を数人を雇用する予定である。万が一、2022年度にも渡航が叶わなかった場合には、現地調査会社に調査の代行を依頼する予定である。またその場合には、定性的なデータよりも定量的なデータが主となるため、調査データの整理のためにアルバイトを雇用し、謝金を支払う予定である。
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