2022 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological Study on Aging and Gender in Contemporary India
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20K01209
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
菅野 美佐子 青山学院大学, 地球社会共生学部, 助教 (80774322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
押川 文子 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 名誉教授 (30280605)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インド / 文化人類学 / 高齢者 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
社会や家族と能動的につながろうとする高齢者の生活実践の諸相を解明することを目的としている。これらを明らかにするために、本研究ではインド農村および 都市社会を対象とした人類学的調査を基礎とし、社会学や統計学的研究も有機的に関連づけながら、高齢女性の実態をモビリティ、消費、行政サービスの利用状況、身体的・知的感覚や感情への対処などの多角的な観点から分析する手法をとっている。 令和4年度は、これまで新型コロナウィルス感染症拡大により渡航が制限されていたインドにおいて現地調査を3年ぶりに再開し、現地における高齢者の現状を参与観察や聞き取り調査、データ収集などを行いながら進めることができた。 調査において見えてきたのはインドの社会経済的変化が高齢者に及ぼす影響についてである。アフターコロナの風潮の高まりとともにインド社会においても日常が回復し、経済活動の活性化がインド経済の良好な成長を再び支えるようになっている。また、現モディ政権下でのインフラの整備、生体認証機能を備えた身分証明カードの発行が進み、これまで滞りがちであった高齢者への年金支給が潤滑化するなどの変化ももたらされている。 その一方で、急速な経済成長は若年層の都市への集中を促進しており、地方に暮らす高齢者を支える家族が減少している。しかし、インドでは「親および高齢者の扶養と福祉法」を制定していることからも分かるように、高齢者のケアは子の義務であり道徳的慣習として位置付けられており、良質な老人介護サービスは高額な民間の施設でしか提供されていない。そのため、子どもにとっては、いかにして親をケアしていくのか、当事者にとってはいかに子どもの世話にならず可能な限り自立して生きていくのかを模索する方法が取られている状況が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、これまで新型感染症拡大により渡航が制限されていたインドにおいて現地調査を3年ぶりに再開した。 本研究事業では、子どもからのケアに依存するだけでなく、自立的かつ積極的に老後の充実した生活を享受しようとする高齢女性の生のあり方に着目している。 代表の菅野は年度内に2回の現地調査を実施し、農村地域のみならず都市部での調査を実施し、高齢者による公園での朝活に関する参与観察や、ヨガやメディテーションの教室に通う高齢女性たちへの聞き取りなどを実施した。そこで見えてきたのは、就労や育児等で多忙な子ども世代にかわって、高齢の親たちが親族や近隣住民との付き合いを積極的に行い、社会的ネットワークの維持に貢献していること、そのことが彼らの生きがいとなっていること、さらに健康の維持にも役立っているということである。こうした状況をより深く追求し、さらに広範な事例を収集することでインド社会における高齢者の生き方、あり方に関する知見を広い視野で捉えることができると考えられる。 また研究分担者の押川は現地の研究者との交流を積極的に行い、現地研究所が実施する農村調査に参加し、農村における居住形態の動向、農地活用や畑仕舞いなどの動向に関する調査分析を進めた。調査分析の結果、就労年齢にあるかなり多くの若年層が農村にある自宅から近隣都市に通勤していたり、週末のみ農村に帰省するなどして農地を維持しようとしていること、さらに農地の維持には農村に残っている高齢者の存在が重要であることが明らかとなった。このような状況から、就労年齢にある若年層は、比較的実家の近隣に居住し、農業外就労をしつつも、親を介して農地経営を維持し、さらに親のケアも両立させていることが考えられ、今後この現状をより深く言及していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、現地調査を可能な限り進める予定だが、研究代表者の健康上の理由から渡航が難しい場合は、現地のインド政府が公開する全国家族健康調査や国勢調査を含む入手可能な統計データや、'India Today'、'Times of India'、 'The Hindu'といったオンライン出版の現地新聞などでの情報収集とその分析を進める。また、研究分担者や関連の研究を行う国内外の研究者との対面及びオンラインでの積極的な交流を通じて、これまでの研究成果をもとにワークショップや研究会を開催するなどして意見交換を行う予定である。
以上を通じて到達した成果は、『南アジア研究』などの学会誌への執筆および投稿を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究事業初年度より新型コロナ ウィルスの感染拡大によって、2年間に渡って渡航が不可能となり、渡航費に充当していた予算が使用できず繰り越されてきたため、大幅に予算が余る結果となった。 繰り越された予算については、令和5年度において現地調査や学会、研究会等の旅費に充てるほか、これまで収集したデータ分析のためのツール、PCやソフトウェアの購入、データ整理のための人件費などに充てることを予定している。
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Research Products
(5 results)