2022 Fiscal Year Research-status Report
現代韓国社会におけるローカル・コミュニティの再構築:「共同体作り」の事例から
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20K01211
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 洋 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50262093)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 共同体 / ローカリティ / 韓国 / 社会人類学 / マウルづくり / 住民自治 / 民族誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,近年の韓国で地域住民,社会・市民運動勢力,ならびに地方自治団体の連携によって活発に推進されるようになった「共同体づくり」・「マウルづくり」活動を,主に現地での資料収集に基づき,ローカル・コミュニティ(地域共同体)の設計的な組織化の実践を通じてローカルな関係性が生成・再編成される過程として分析的に記述することを目的とする民族誌的研究の試みである。 2022年度の成果として,まずコロナ禍によって中断していた韓国現地での資料収集を再開し,2022年8~9月(約3週間)と2023年3月(約3週間)の2回にわたって全羅北道南原地域等でインタビュー等の調査を実施したことをあげられる。1回目の調査では,2019年5月~12月の滞在調査で収集した主に市街地を拠点とする共同体活動の諸事例について,その後の活動の展開と活動家の履歴に焦点を合わせて追跡調査を行った。2回目の調査では,主に農村部での共同体活動について現地調査・インタビューと関連機関での資料収集を行った。その成果の一部は,2022年11月に韓国文化人類学会秋季研究大会で発表するとともに,2023年5月刊行予定の学術誌に研究論文として投稿した。 次に,初年度より実施しているSNSを通じた南原地域の共同体活動事例の収集も継続して行った。 最後に,当該年度の理論的成果として,ローカリティ/ローカルな主体の生産とネイバーフッドとの弁証法的関係についてのAppaduraiの議論を,地域住民による市民活動への参与と協同組合経営の事例に即して展開したことをあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究計画では,主たる資料収集の方法として現地調査を想定していたが,当初の2ヶ年度にわたって実施できなかった韓国現地での資料収集を,当該年度に初めて実施することができた。これにより,共同体活動の経年的展開と活動家の履歴の調査,ならびに農村部での事例収集という研究計画の重要な部分を遂行することができた。また理論面においても,本研究の最終的な成果の中心となるような進展を実現することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では当該年度で終了する予定であったが,コロナ禍によって2ヶ年度にわたり現地調査が事実上不可能な状態にあったため,計画を1年延長することとした。2023年度には前年度に継続して韓国南原地域等での現地調査を実施するとともに,研究成果を取りまとめて報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴う日本の渡航制限と韓国の入国・行動制限により,2020年度ならびに2021年度に外国出張を実施できず,研究計画の主要な部分をなす韓国現地での資料収集に遅滞が生じたため,次年度使用額が生じた。2023年度には,韓国現地での資料収集と研究資料の整理,ならびに報告書作成のために助成金を使用する計画である。
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