2022 Fiscal Year Research-status Report
アメリカのキリスト教寄付における多元的なモラリティーの調整の文化人類学的研究
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20K01218
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中 朋美 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (60707058)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 寄付 / モラリティー / キリスト教 / チャリティー / パンデミック |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス感染症の状況もやや落ち着いてきてはいたが、令和4年度においても、現地での調査が困難な状況が続き、実際の訪問を実現することができなかった。しかし、代替の調査方法を探ることによって、対象者との個別聞き取りを進めることができた。またオンラインでも参加可能な関連行事(定例の礼拝、教会の総会など)には加わることができ、現地の教会員の様子を詳しく調査することができた。 また今年度は今までの観察や調査資料を基に分析をさらに進め、当初予期していなかった新型コロナ禍の中で、教会の寄付をめぐる動きについて考察することもできた。これらをまとめ、Society for Economic Anthropologyの第42回大会(2022年6月、オンライン開催)にて、リベラル派のメノナイトがどのように分極化するアメリカ社会と関わろうとしているのかの葛藤についてポスター発表した。また2022年11月にはAmerican Anthropological Associationの年次大会(ハイブリッド形式にて開催)にて、パンデミックの中でのメノナイトの宗教的寄付の様子をvirtual talkとして発表した。またリベラルメノナイトの人々が、どのように新型コロナ禍やアメリカのキリスト教ナショナリズムの動きに対応しているのかを考察した論文を、地域学論集19巻3号(p.p.97-108)にて発表した。 また次年度となるが、4月に、新型コロナ禍でのリベラル派メノナイトの寄付の対応の違いについて教会員と教会のレベルで分析したものを発表が予定されている。 令和5年度は幸い、新型コロナウィルス感染症への対応も整いつつある。引き続きオンライン上での調査機会を最大限に利用しつつ、現地での調査を集中的に行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度も新型コロナウィルス感染症影響を受け、海外渡航には様々な制限や手続きの煩雑さなどがともなった。また教会の中には基礎疾患を持つ方などが多く、海外からの調査者が訪問し、調査を安全に実施する調整等が大変困難となった。このため現地(アメリカ、バージニア州)での参与観察や聞き取り調査を行うことができなかった。また継続的な新型コロナウィルス感染症拡大とその影響により、教会員や牧師等の休暇、活動の休止などが、情報収集が困難となった時期もあった。これらを受け、当初予定していたようなスケジュールでの聞き取り調査等ができず、その分調査がやや遅れ気味である。一方、限定的ではあるが一部の教会活動が引き続きオンラインで参加することができた。今後は、海外渡航も緩和され、新型コロナウイルス感染症への対応も落ちつくことが予想される。そこで令和5年度はオンライン等での機会を利用しつつ、現地訪問によって、調査を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度春の段階において、研究対象地のアメリカの新型コロナウィルス感染症の状況は改善し、また日本からの渡航に対する制限も少なくなってきている。これを受け、今までできずにいた現地調査を集中的に行う予定である。幸い、2年に一度開催されるメノナイト教派の集会が7月に対面で開催され、そこでより広い視点からメノナイトの教会内の寄付やチャリティーをめぐる意見や、それらと多様な文化的、社会的な価値観の折衝の様子を考察していく予定である。この他にも、可能な限り教会での様子を現地もしくはオンラインで調査し、分析を進めていきたい。またこれまでの研究成果を段階的にまとめ、学会等での発表に取り組み、他の研究者との意見交換をしつつ、研究の成果の確認をしていく。
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Causes of Carryover |
令和4年度は新型コロナウィルス感染症のため、海外渡航の制限が課された。このため現地調査で使用予定であった旅費等の執行は延期となった。令和5年度は、新型コロナウィルス感染症の状況が落ち着き、海外渡航も比較的制限を受けずに実施することができることが予測される。この状況を活かし、未使用の助成金をその際の旅費、資料分析費等で重点的にかつ計画的に使用する予定である。
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