2021 Fiscal Year Research-status Report
農業開拓移民としての八重山諸島台湾系移民ー「華僑華人」研究の再構築
Project/Area Number |
20K01222
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三尾 裕子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20195192)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 台湾系移民 / 八重山諸島 / 文化人類学 / 移民 / 農業開拓民 / 石垣島 / 土地 / 宗教 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業開拓民として沖縄県の八重山諸島に入植した中国系移民(台湾出身の漢族移民)を対象にすることによって見えてくる「華僑・華人」像が、従来の労働者・商人型の「華僑・華人」とどのように異なり、それによって、旧来型の「華僑・華人」像をどのように相対化できるのかが、本研究の「問い」である。このため、石垣島を中心とする八重山諸島の台湾系移民を対象に、彼らがどのように現地に入植し、定着していったのかを歴史史料とインタビュー、参与観察を通して明らかにすることを目的とした。具体的には、台湾系移民の多くが参加する4月初旬の清明節や旧歴8月15日の土地公祭の時期を利用して、集中的に参与観察やインタビューを行う予定であった。また、彼らが石垣島でどのように土地を開拓し、所有していったのか(または、できなかったのか)についても調査を行う予定であった。しかし、残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大のため、現地調査は行うことができなかった。他の用務で石垣島に数日行くことができた際に、土地公廟などについて簡単な調査を行ったが、この期間、図書館が蔵書整理のため閉館しており、予定していた文献資料を手に入れることはできなかった。このため、2021年度は、主に日本の華僑華人と、比較対象としてアメリカに移住した華僑華人に関する文献収集を行った。現地調査に代わるものとしては、SNSなどを通じて現地と連絡をとりつつ、台湾系移民が集まる伝統行事などの開催状況を確認した。また、八重山の台湾系移民の入植過程は、戦前の日本による台湾の植民地統治と切り離せないことから、植民地主義と台湾の人々の歴史に関して、これまで行ってきた調査研究の成果を国内外に公開するための口頭発表、論文執筆、書籍の刊行などを行った。なお、研究協力者の松田良孝氏は、8月に琉球華僑総会八重山分会が行った同郷墓地における骨壺の整理作業に関して、参与観察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗が予定通りに進まなかった原因は、現地調査を十分に行うことができなかったことに尽きる。現地調査の協力者(インフォーマント)には高齢者も多く、また長時間にわたるインタビューは、感染リスクという点から望ましいものとは言えず、接触時間をできるだけ少なくするような調査以外はできなかった。ただし、比較的若い年齢層の現地の台湾系移民の方々とは、SNSを通じて随時、連絡を取り、非常に限定的ではあるものの、可能な限り、聞き取り調査は行った。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染が落ち着くことやワクチン接種が進んで、感染リスクが低下した場合には、所属機関の新型コロナウイルス対策のガイドラインに準拠しながら、可能な限り速やかに現地調査を遂行する。本科研費による研究の開始以前にコンタクトを取っていたインフォーマントの方々に対するインタビューを再開しつつ、これまでコンタクトを取ることができなかった方々に徐々に調査対象を広げていく。また、農業移民の土地の所有形態については、関係する役所での土地台帳などが閲覧できるので、インフォーマントとの接触を最小限に抑えながら調査を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、本研究において最も重要な現地調査が新型コロナウイルスの蔓延により支障をきたしたためである。2022年度は、アメリカシアトルでの学会発表が決まっているため、渡航できた場合には、比較対象として当初想定していたハワイではないが、アメリカ、特にシアトル(可能であればポートランドを含める)の華僑華人社会について調査し、華僑華人コミュニティの形成過程についての資料を収集して理解を深めたい。また、新型コロナウイルスの感染状況を見ながら、可能な限り八重山諸島での現地調査を軌道に乗せたい。
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