2021 Fiscal Year Research-status Report
An Anthropological Study of Artification Phenomena in Contemporary Societies: From Perspectives of Fetish, Markets and Things
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20K01229
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
青木 恵理子 龍谷大学, 社会学部, 教授 (40180244)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アート / 人類学 / フェティッシュ / 市場 / モノ / 想像力 / 創造力 / 捏造力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に引き続き、新型コロナウイルスの世界的蔓延により、海外におけるフィールドワークばかりでなく、日本国内でのフィールドワークも自粛せざるを得なかった。新型コロナウイルスの感染状況がひどくないときに、2021年6月27日にリニューアル・オープンした滋賀県立美術館『ソフトテリトリー展』、京都国立近代美術館『発見された日本の風景展』、国立民族学博物館『躍動するインド世界の布展』及び『ユニヴァーサル・ミュージアム展』、ボーダレス・アート・ミュージアムNO-MA『79億の他人:この星に住む、すべての「わたし」に』展、やまなみ工房を訪れ、資料収集を行った。また世界的に進歩の見られたオンライン会議メディアを用いた、カルチュラルスタディーズ学会で周辺化されたアートに関するパネルを組織し、発表した。また、九州芸文館(福岡県)の羽鳥悠樹氏が企画した、インドネシアのアート・コレクティヴ8団体を結んだ、9回のセミナーシリーズ『コレクティヴと考える:パンデミック以降のアート/地域文化活動の可能性』に参加し、依頼をうけて、長いエッセイをそのウェブサイトhttps://bersama-kolektif.com/essay/aoki/に掲載した。2021年5月には、Willemijn de Jong氏、John Clammer氏と編集したArts of Margins at World Encounterを、アメリカの出版社Vernon Pressから出版、2022年3月には『アートの根っこ:想像・妄想・創造・捏造を社会に放つ』を編集執筆し、晃洋書房から出版した。いずれにおいても筆者は序論と章やエッセイの執筆を担当した。これらの出版は、直接的にはこの科研の助成を得たものではないが、この研究と深く結びついている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年の本科研費申請当時には想定できなかった新型コロナウイルスが世界的に広がり2021年度にも終息しなかったため、2020年度、2021年度と国内外におけるフィールドワークの計画を大幅に自粛せざるを得なかった。大学の授業や業務のない、夏季、冬季、春季の長期休み期間に予定していた長期フィールドワークも実施することができなかった。それにより生じた研究の遅れは、文献調査やオンラインによる調査などで補ったが、計画の中心であるフィールドワークができなかったことが進捗の遅れの理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、文化人類学のアート研究を整理する傍ら、国際芸術祭、アートフェア、アートマーケットの動向に注目して研究を進める。特に、2022年に予定されているドクメンタに関連する動向に注目する。ドクメンタは、ナチスによって退廃芸術として破壊された近代アートを復興し、国際的な芸術界におけるドイツのプレゼンスを示すために、カッセルというドイツの地方都市で、1955年からほぼ5年おきに開催されている国際的国際芸術祭である。ここに出品されることにより、アートマーケットでの高い価値が付与されるといわれる。主催者は社会関与性を強く意識してもいる。2022年のドクメンタのアーティスティック・ディレクターは、インドネシアのアートコレクティヴである。新型コロナウイルスによるパンデミックの収束が見られれば、インドネシアとドイツに行きフィールドワークを行う。さらに、2022年には、ヴェネティア・ビエンナーレも開催されるので、渡独にあわせてフィールドワークを行いたい。あいちトリエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭、大地の芸術祭など、日本国内で開催される国際芸術祭の臨地研究を行う。また、対面およびZoomやemailなどを使って、調査、インタヴュー、研究会参加や主催などを実施する。当初計画していた、インドネシア、ヨーロッパ、アメリカや日本でのフィールドワークを、国際芸術祭、障がい者アート作成、美術館・民族学博物館、社会関与型アート活動、アートフェア、アートオークション、アートディーラー、伝統/現代アート活動、アート経験のない社会でのもの創りや儀礼活動を対象に行う。本科学研究期間の半ば以降には、成果をまとめはじめ、明確な成果発信ができるよう、調査研究を深化させてゆく。
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Causes of Carryover |
理由は以下のとおりである。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が止まらず、海外でのフィールドワークができなかった。国内におけるフィールドワークも大幅に制限された。カルチュラルスタディーズ学会の研究大会で、アートに関するパネルを組織したが、オンラインでの発表となったため旅費の支出は生じなかった。インターネットを用いた調査やオンラインのインタヴューなどを行うことはできた。図書館の書籍による文献調査を行った。いずれの場合にも、支出は生じなかった。 次年度の使用計画は以下のとおりである。アーティスト、キュレーター、アート研究者(人類学、社会学、哲学、カルチュラルスタディーズ、文化政策などの研究者)との研究交流を行うために、ハイブリッドの研究会を4回開催する。対面参加する発表者やコメンテーターの旅費として使用する。よりよい研究会の成果を得るために、書籍など文献を購入する。海外の国際芸術祭(ドクメンタ15とベネチアビエンナーレ)、ミュージアム(ケ・ブランリ、アルサンピエールなど)および、制作現場を対象に調査を行う。国内でも、瀬戸内国際芸術祭、大地の芸術祭、あいちトリエンナーレなど、来訪者数の多い芸術祭の調査を行う。以上のような現地調査のための旅費および資料収集費として使用する。
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