2022 Fiscal Year Research-status Report
Culture of the Sea seen from the Andean Highlands
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20K01232
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
加藤 隆浩 関西外国語大学, 国際文化研究所, 研究員 (50185849)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アンデス / 海の文化 / 海民 / 儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、前々年来のパンデミックのため当てにしていた研究者・インフォーマントの死亡が相次ぎ、調査地も一時的にせよ混沌とした社会状況に陥った。そこで、研究の質を落とさないことを前提にまずは年度内に何ができるかを検討した。その結果、予定していたペルー北海岸のワンチャコでの調査を次年度以降に回すこととし、代わりにリマ近郊のカリャオ港沿岸にフィールドを移動することにした。そこでの海民は10名にも満たず、海民としての活動も限定的だったので、当初あまり成果の期待できない調査に思えたが、2011年から、「聖なる島」とされる付近のサンロレンソ島で、海神ママコチャへの伝統的な儀礼(クスコ風の衣装を着ている)が再興されており、そこには、本研究が目的とする、海岸部と山岳部の文化交流の姿がはっきりと見てとれることが分かった。また、サンロレンソ島を含め周辺の小島は、16世紀末頃に山間部で採取されたワロチリ文書(神話集)で活躍するパチャカマック神らの化身とされているなど、エスノヒストリーの点からも海岸部と山岳部のつながりが見えており、加えて、そのつながりがサンロレンソ島―ワロチリ地方―クスコという文化伝播の流れを暗示しているのでは、と思える。 では、山間部と太平洋岸とでどのようなモノのやりとりがあったか。ただし、本研究は 両地域間の単なるモノの流通や交換にとどまらず、本研究の目的に合わせて話を先に進め海岸部由来の観念ゃ文化要素の、山岳地のそれらに対してどれだけ先行性・優位性があるかとなると、注目すべきは、海岸地域の特産品でありながらアンデス山間部の儀礼的世界では欠くことのできない3つの品―スポンディルス貝(ムユ)、ほら貝(プトゥトゥ)、海藻(コチャユーヨ)―となり、それらに関しては、海民、農民の両者からデータを採集することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗は、やや遅れているが、理由は以下の通り。 1)新型コロナのパンデミックにより、一斉にオンラインで作業が始まり、1年目、2年目は、機械に不慣れなチリ、エクアドル、ペルーの研究者、インフォーマントとの意見交換がなかなかうまく行かなかった。しかし、コンピュータの操作に慣れてくるにつれてこの問題は自動的に解決した。 2)急速な円安基調の日本経済により、航空運賃が高騰し例年より30~40%高く、現地調査の日程を削るしかなかった。 3)ペルーはじめ、チリ、エクアドルでもインフレが昂進し、政情が一部不安定になっており、夜間外出禁止令、非常事態宣言が発出されるなど、調査地を自由に動きづらいことがある
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Strategy for Future Research Activity |
進捗はやや遅れているが、以下の対応により、研究の質を下げないようにし、この研究を実りあるものとしたい。 1)とりあえず、研究代表が比較的よく知っているペル―を中心に調査。研究を実施し、それをパイロット研究としてまずは結果を出すことに専念する。 2)急速な円安・インフレ基調の日本経済により、潤沢ではない研究費は、1にも2にも緊縮財政で行くしかあるまい。 3)政情が不安定で、夜間外出禁止令、非常事態宣言が発出されている地域には接近しないでおくのが肝要である。
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Causes of Carryover |
科研の申請時、コロナによるパンデミックを予想していなかった。 結果、2年間調査に出ることができず、その間、研究計画を1年延長すべく、予算を残しておいた。 今後、現地調査期間を延ばし、調査の質を高めること、さらには、研究協力者を増員して幅広い研究を重ねたい。
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