2020 Fiscal Year Research-status Report
Activities of the ICRC Delegates in the territory under the Japanese occupation during the World War II
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20K01247
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
大川 四郎 愛知大学, 法学部, 教授 (70185205)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際人道法史 / ジュネーヴ条約 / 赤十字国際委員会 / 民間人抑留問題 / 集合的記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、アーカイヴ史料調査状況について述べる。新型コロナ感染拡大のため、出張予定していた国内外アーカイブのうち、外務省外交史料館を1回訪問できたのみである。ここでは、1943年12月にスパイ容疑によりボルネオ駐在赤十字国際委員会代表を銃殺刑に処した旧日本海軍軍律会議について、当時の担当法務官が敗戦直後にまとめた事後報告書を閲覧した。その叙述は極めて詳細である。担当者の個人的記憶だけで記載できるものではない。それゆえ、外務省以外に、旧軍文書を継承している厚生省援護局あるいは防衛省防衛図書館書庫に関連文書が所蔵されているのではないかと推察する。また、担当法務官の関係者が存命であれば、関係資料の有無又は面談について照会できないかとも考えている。他方、在ベルン・スイス連邦公文書館で当課題採択以前に蒐集した文書によると、この処刑事件は、戦後のスイス連邦閣僚会議において、最重要対日案件の一つとして審議されている。 第2に、関連文献調査について述べる。J・ファン・デュルム他編『1942-1945年蘭印における日本軍収容所図解地図』(オランダ語、2001年, 224p.東京外国語大学図書館蔵書)を参照中である。同書により、当課題が対象としている時期の旧蘭印領内において、旧日本軍が設置管理運営していた民間人抑留所の位置をほぼ特定できそうである。また、モーリス・アルヴァックス著『集合的記憶』(フランス語、1950年、邦訳あり)を閲読した。著者が提唱する「集合的記憶」概念は、当課題の研究を進めるにあたり、有用であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当課題における主たる研究作業は、国内外のアーカイブにおいて、第一次史料を実地に閲覧調査することにある。しかるに、当年度中、新型コロナウイルス感染拡大という予想外の緊急事態が、日本国内はもとより世界的規模で生じている。国内の場合、出張予定先としていた都内アーカイブへの出張につき、勤務先大学より自粛を要請されている。このため、緊急事態宣言が解除されたわずかの期間に、外務省外交史料館を1回訪問できたのみである。国外の場合、出張予定先のスイスが、外務省により渡航中止勧告先に指定されたままである。勤務先大学からも外国出張を一律禁止されたままである。その上、主たる出張予定先としていた在ジュネーヴ赤十字国際委員会アーカイブ閲覧室は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、閉鎖され続けている。このため、同閲覧室を訪問・利用することができないままである。 また、新型コロナウイルス感染拡大により、勤務先大学では、担当授業が通常の対面型から遠隔型へと変更された。研究代表者にとり、遠隔型授業は初めての経験だった。授業準備と事後の学生対応と成績評価とに多大の時間を奪われてしまった。当課題の研究に充てることができたのは、残余の時間である。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、当課題採択以前に在ジュネーヴ赤十字国際委員会アーカイブ、在ベルン・スイス連邦公文書館、在バーゼル・福音伝道団アーカイヴで蒐集した資料、および、採択以後に外務省外交史料館で蒐集した資料、ならびにJ・ファン・デュルム他編『1942-1945年蘭印における日本軍収容所図解地図』について、閲読および分析を進めていく。 第2に、1943年の旧蘭印領で在ボルネオ赤十字国際委員会代表に死刑判決を下した旧日本海軍将校4名(1名が法務官)の関係者が存命であれば、関連資料ないしは談話の提供を求めてみたい。 第3に、研究代表者(大川)が勤務する大学の出す「活動制限指針」が緩和され次第、上京の上、日本赤十字社本社情報プラザ、外務省外交史料館に加え、厚生省援護局あるいは防衛省防衛図書館書庫に、当課題に関係する戦中文書が存在していないかを、調査したい。 第4に、前掲「第3」と同様に、研究代表者の所属大学の出す「活動制限指針」が緩和され次第、スイスへ出張し、在ジュネーヴ赤十字国際委員会アーカイブ、在ベルン・スイス連邦公文書館、在バーゼル・福音伝道団アーカイブ、バーゼル準州都市部公文書館を訪問し、関連文書の継続調査にあたりたい。
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Causes of Carryover |
当課題における主たる研究作業は、国内外のアーカイブにおいて、第一次史料を実地に閲覧調査することである。しかるに、当課題の研究が「遅れている」理由として「7.現在までの進捗状況」において、詳述したように、当年度中、ほとんど補助金を執行することができず、次年度使用が生じた。それゆえ、次年度としては、当年度中にできなかった国内外アーカイヴ調査を実施すべく、国内移動旅費、国外渡航費として当年度残額を使用したい。
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