2021 Fiscal Year Research-status Report
Activities of the ICRC Delegates in the territory under the Japanese occupation during the World War II
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20K01247
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
大川 四郎 愛知大学, 法学部, 教授 (70185205)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際人道法史 / ジュネーヴ条約 / 赤十字国際委員会 / 民間人抑留問題 / 集合的記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、アーカイヴ史料調査状況について述べる。前年度と同様に、新型コロナ感染の勢いは、全世界的に続いた。このため、出張予定していた国内外アーカイヴのいずれをも訪問していない。出張を控えることは、研究を遅滞させることになる。しかし、健康であって初めて研究を実施することができる。残念ではあるが、新型コロナウイルスに対する医学的知見が蓄積され、公衆衛生上の安全が確立された段階で、一挙に遅滞状況を挽回したい。 第2に、関連文献調査について述べる。前年度に続き、J・ファン・デュルム他編『1942-1945年蘭印における日本軍収容所図解地図』(オランダ語、2001年, 224p.東京外国語大学図書館蔵書)を参照中である。同書により、当課題が対象としている時期の旧蘭印領内において、旧日本軍が設置管理運営していた民間人抑留所の位置をほぼ特定できた。同書冒頭の先行研究史叙述により、当該研究課題に関し、オランダにおいて、ファン・フェルデン著『第二次世界大戦中の日本軍管理下民間人抑留所』(オランダ語、初出は1963年、1985年までに第4版)に代表される研究業績の蓄積があることを知った。不明を恥じている。ファン・フェルデン博士らの著作の閲読に努めたい。また、マリアンヌ・デューバッハ・ヴィッシャー著『聴診器を携え、小舟に乗って診療へ - ボルネオにおける医学博士フィッシャー・ミリウス夫妻の事績(1928―1943)』(ドイツ語、1998年)を閲読している。著者はマタェウス・ヴィッシャー博士(第二次世界大戦中、在ブルネオ赤十字国際委員会代表)の長女である。当時のボルネオの状況の一端を伝えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当課題における主たる研究作業は、国内外のアーカイブにおいて、第一次史料を実地に閲覧調査することにある。残念ながら、昨年度に始まった新型コロナ感染拡大は、世界的に見て、衰えていなかった。国内、就中、首都圏の感染動向が予測できなかった。万が一の感染を警戒し、国内での出張予定先としていた外務省外交史料館へは、一度も訪れていない。国外の場合、出張予定先のスイスが、外務省により渡航中止勧告先に指定されたままだった。勤務先大学からも外国出張を一律禁止されたままだった。その上、主たる出張予定先としていた在ジュネーヴ赤十字国際委員会アーカイブ閲覧室は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、コロナ禍以前に比べ、閲覧条件が著しく厳しくなった(1週間あたりの開室日数は5日間から3日間へ、1日の開室時間は7時間30分間から4時間30分間へと縮減、1回の入室可能人数は5人から1名へと制限)。 また、昨年度に比べ、研究代表者が担当する遠隔型授業のコマ数は減った。しかし、授業準備と事後の学生対応と成績評価とに多大の時間を奪われてしまった。当課題の研究に充てることができたのは、残余の時間である。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、当課題採択以前に在ジュネーヴ赤十字国際委員会アーカイブ、在ベルン・スイス連邦公文書館、在バーゼル・福音伝道団アーカイヴで蒐集した資料、および、採択以後に外務省外交史料館で蒐集した資料、ならびにJ・ファン・デュルム他編『1942-1945年蘭印における日本軍収容所図解地図』、ファン・フェルデン著『第二次世界大戦中の日本軍管理下民間人抑留所』、デューバッハ・ヴィッシャー著『聴診器を携え、小舟に乗って診療へ』について、閲読および分析を進めていく。 第2に、1943年の旧蘭印領で在ボルネオ赤十字国際委員会代表に死刑判決を下した旧日本海軍将校4名(1名が法務官)の関係者が存命であれば、関連資料ないしは談話の提供を求めてみたい(当年度実施し得ず)。 第3に、研究代表者(大川)が勤務する大学の出す「活動制限指針」が緩和され次第、上京の上、日本赤十字社本社情報プラザ、外務省外交史料館に加え、厚生省援護局あるいは防衛省防衛図書館書庫に、当課題に関係する戦中文書が存在していないかを、調査したい(当年度実施し得ず)。 第4に、前掲「第3」と同様に、研究代表者の所属大学の出す「活動制限指針」が緩和され次第、スイスへ出張し、在ジュネーヴ赤十字国際委員会アーカイブ、在ベルン・スイス連邦公文書館、在バーゼル・福音伝道団アーカイブ、バーゼル準州都市部公文書館を訪問し、関連文書の継続調査にあたりたい。
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Causes of Carryover |
当課題における主たる研究作業は、国内外のアーカイブにおいて、第一次史料を実地に閲覧調査することである。しかるに、当課題の研究が「遅れている」理由として「7.現在までの進捗状況」において、詳述したように、当年度中、全く補助金を執行することができず、次年度使用が生じた。それゆえ、次年度としては、当年度中にできなかった国内外アーカイヴ調査を実施すべく、文献費、国内移動旅費、国外渡航費として当年度残額を使用したい。
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