2022 Fiscal Year Research-status Report
12世紀後半アルプス以北における教会法学の比較研究-文献学的アプローチ
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20K01253
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
源河 達史 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10272410)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教会法学 / 教会論 / 教会改革 / 史料論 / 伝承批判 / 文献学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度には、2つの学会報告(招待講演)を予定していた。 1つはボローニャ大学主催の学会“Studia Gratiana: Edition”にて予定していた報告“A Critical Edition of the Summa Antiquitate et tempore”である。この報告は、グラティアヌス教令集注釈書Summa Antiquitate et temporeの成立を写本伝承から考察するものであり、これまで知られていた4つの写本に伝わるテクストについて、その相互関係とそれぞれの写本に固有の特徴とを明らかにすることができた。Summa Antiquitate et temporeの作成に際して用いられた他の註釈書の使われ方を含め、アルプス以北における初期教会法学の在り方に新たな光をあてることができた。この報告は、コロナ禍のため、PowerPointで作成した録画を提出する形をとった。 もう1つはチューリッヒ大学主催のRechtshistorikertagにて行った“Autoritaet und Normativitaet im kanonischen Recht des 11. und 12. Jhs.”である。この報告は、1050年頃から1170年頃(Summa Antiquitate et tempore)までの教会法・教会法学における規範テクストの権威と実効性を論じるものである。この報告においては、とりわけ、教会改革における教会概念の変化と教会法の変化との連動性と、1140年頃を境とする教会法の変化と連続性とを、「聖霊による法定立」という観点から、明らかにすることができた。教会法をius divinum(神法)と呼ぶことの意味を明らかにすることができたことも1つの成果である。この報告はチューリッヒ大学にて対面で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度の前半は、海外渡航における各種の規制など、コロナ禍の影響が大きく、予定していた史料調査ができなかった。参加を予定していた学会も、1つ(Rechtshistorikertag、チューリッヒ大学)は無事に行われたが、もう1つは、録画を提出したものの、コロナ禍のため延期され、2022年度中の開催が見送られた。 また、Summa Antiquitate et temporeの成立に際して用いられた先行註釈書の伝承を調べる中で、これまで知られていなかったSumma Antiquitate et temporeの写本が見つかった。新たな写本の発見そのものは重要な成果であるが、新たに当該写本の伝承上の位置づけを明らかにする必要が生じ、多くの時間を割くこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の2つの研究報告を学術誌に発表する。この他、新たに見つかったSumma Antiquitate et tempore写本の伝承上の位置づけと、Summa Monacensisグループに属する註釈書Summa Inter ceteraの分析とを学術誌に投稿する。実際に掲載されるのは2024年度の予定である。
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Causes of Carryover |
他の研究助成金を得ることができたため。
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