2023 Fiscal Year Annual Research Report
12世紀後半アルプス以北における教会法学の比較研究-文献学的アプローチ
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20K01253
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
源河 達史 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10272410)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 古典教会法学 / 史料研究 / グラティアヌス教令集 / 文献学 / 伝承批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる2023年度には、Summa Antiquitate et tempore(以下SAT)の成立過程並びに関連諸著作との関係を解明することに注力した。具体的には、これまでSATの影響を受けて成立したと考えられてきたPseudo-Rufinusと呼ばれる著作とSATとの関係を考察した。その結果、①Pseudo-RufinusがSATの初期段階を表す著作であること、②Pseudo-Rufinusを伝える諸写本がそれぞれ同著作の異なる発展段階を表していること、③SATはPseudo-Rufinusの最も新しい段階にあるテクストを底本として成立したこと、④Pseudo-RufinusとSATは1人の著者に帰せしめられること、を明らかにすることができた。この成果は国際的な専門誌(通称サヴィニー雑誌)に寄稿した(英語)。なお、本論文はSATそれ自体の成立過程をも触れているが、Pseudo-Rufinusとの関係を論じるために必要な範囲にとどめている。そのため、SATの諸段階の詳細な識別についても改めて論文を発表する予定である。 この他、本研究で得られた知見をも踏まえて、11から12世紀にかけての教会法と教会法学の発展に関する論文を、やはりサヴィニー誌に寄稿した(ドイツ語)。 研究期間全体を通じて、本研究は、写本伝承の精密な分析に基づき、伝承されたテクストの発展段階を細かく識別することを試みてきた。上述の成果を既発表のSumma Monacensisサークルに関する成果と併せ考えるならば、パリを中心とする古典教会法学について、従来の研究よりも精確に諸著作相互の関係と発展のプロセスとを解明することができたと思われる。
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