2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K01267
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 啓之 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (60580397)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 租税法 / 課税権 / 主権 / 国家管轄権 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、まず財務省財務総合政策研究所の依頼による機関誌フィナンシャル・レビュー141号『法システムとしての租税法I:法制度の中における租税法の機能』のために「国際的な課税権の配分」と題する寄稿論文の執筆を完成させ、国際連盟の時代に確立した課税権の国際的な配分原理とその今日にまで至る展開について法理論上の見地から実証的な研究を進めること、また時期的に一部重複するが、「租税法律主義」に関する論文集(有斐閣)への寄稿論文として、近代国家の形成過程における議会の課税承認権から租税法律主義への転換について、同じく比較法史な手法により実証的な研究を進めることを予定していた。しかし、内外における想定外の事態に加えて、抑々主題が深大であり、短期間での研究完成には至らなかった。 他方、研究の長期化に伴い、当初の研究計画になかった英国におけるマグナ・カルタ以来の租税財政制度の立憲史に取り組むことができたのは、令和2年度の僅かな成果である。具体的には、マグナ・カルタから権利の請願に至る4世紀余りの継受史について、近年の研究成果による到達点を明らかにし、またヴィクトリア朝における租税権利救済のあり方について当時の判例資料も渉猟しながら研究を進めた。残された課題は、両期間を架橋する17世紀及び18世紀の研究を進めること、並びに租税法律主義の統治及び救済上の諸帰結を体系化する論理を解明することにあると考えられる。これは、本来の研究計画に含まれていた独仏両国の研究とともに、我が国でこれまで不足していた法学的かつ実証的な比較法史研究の成果として、租税法律主義及び課税権の多層的な意義を理解するため裨益するところが大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度は全世界的な感染症対策に伴う所属機関における業務内容の変更及び業務負担の増大並びに研究環境の制約に十分な適応を図ることができなかったことに加えて、心身の不調も重なり予定どおり研究を遂行できなかった。そのため上記区分の評価となる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度及び令和4年度は、当初の予定どおり、故クラウス・フォーゲルの教授資格論文(Klaus Vogel, Der raumliche Anwendungsbereich der Verwaltungsrechtsnorm, Frankfurt a. M. 1965)及びフランス気鋭の研究者の博士論文(Andreas Kallergis, La competence fiscale, Dalloz 2018)を手掛かりとして、独仏両国の国法理論がその共通の淵源から分岐し、いま再び収斂あるいは交錯しつつある理論史的な過程について実証的な研究を進めることとし、更なる総合的な研究へと展開できる示唆ある知見を得られるよう努めたい。その際、令和2年度の僅かな成果である英国租税法史の研究成果を踏まえて、本研究課題に係る英国法と大陸法の交錯関係についても一定の手がかりを得られるよう努めたい。
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