2020 Fiscal Year Research-status Report
学校における宗教的出自の多様な子どもの信教の自由に関する日加比較研究
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20K01269
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
栗田 佳泰 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (60432837)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多文化共生 / 信教の自由 / 行政裁量 / 学校教育 / 比較憲法 / リベラリズム / ナショナリズム / リベラル・ナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、当初予定していた研究活動は大幅に制限された(各種学会・研究会の中止)一方で、オンラインによる研究活動(オンラインによる学会・研究会への参加)の機会は増加し、従来とは異なる形態の活動を余儀なくされた。 本年度は、上の事情によりオンラインあるいは海外からの書籍の取り寄せ等によって収集可能な資料による研究に限定されたが、日加比較憲法の基礎法・政治哲学的意義について序論的考察を行うとともに、本研究の目的である、日本の学校における宗教的出自の多様な子ども(親が少数派の宗教をもつ子ども)の信教の自由や統合の在り方について若干の考察を行い、公表の機会を得た(栗田佳泰「日本の憲法からリベラルへ」法律時報93巻1号(2021年)11-16頁)。 上記論文では、日本の憲法学におけるリベラリズムの位置づけを点検し、近年の多文化主義と政治学の文脈から整理した。その作業により次のことを明らかにした。多文化主義で知られるカナダは、多文化主義による国民統合を企図する点でリベラル・ナショナリズム的な実践を行っているといえるのに対し、日本は、天皇制を含む日本に特徴的な「伝統」文化による統合を企図し、基本的人権というリベラルな諸価値と両立するリベラル・ナショナリズム的な実践を行っているといえる。カナダの最高裁は、憲法上の権利に包含される共有された諸価値を裁判を通じて実現しようとする立場から少数派を統合しようとするが、日本の最高裁は、憲法上の権利に包含される価値の実現ではなく、判決文中にあらわれる「一般人」の観点、すなわち多数派の観点から、宗教的少数派を統合しようとしている。少数派を排除するのではなく統合しようとするものとして多数派を位置づける日本の最高裁の在り方は、極めて特徴的といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、当初予定していた各種学会・研究会への参加を見送ったため、本研究の遂行にあたり、研究者同士の相互交流は十分に行えたとはいえない。また、本務校授業のオンライン化等、想定外の作業も増加した。 一方、本年度末には研究成果の一部を公表できている。 以上から、本研究は順調とはいえずやや遅れてはいるものの、進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もオンラインや書籍の取り寄せ等による資料収集を継続し、本研究を進めていく。とりわけ日加比較憲法の各論的考察については重点的に行う予定である。 従来型(対面型)の学会・研究会の開催・実施については今後も十分に見通せない状況にあるが、オンラインによる参加の機会は増加しているので、できる限りそのような機会を捉えて、研究交流を行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、各種学会・研究会や研究打ち合わせのための出張が行えず、そのために予定されていた支出が行えなくなった。今後は、研究環境の整備等に適宜支出を行い、充実させていく予定である。
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Research Products
(1 results)