2021 Fiscal Year Research-status Report
学校における宗教的出自の多様な子どもの信教の自由に関する日加比較研究
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20K01269
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
栗田 佳泰 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (60432837)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多文化共生 / 言語権 / 社会権 / 教育を受ける権利 / 学校教育 / 外国人の人権 / リベラリズム / 比較憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も引き続き、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、対面型の学会・研究会の開催は僅少であり、オンラインでの参加がメインとなった。本年度も、この事情によりオンラインあるいは書籍の取り寄せ等によって収集可能な文献による研究に専ら従事することとなった。 本年度においては、文化的内容(宗教を含む)を子どもに伝達する「言語」に着目し、今日、広く関心を集めつつある、日本語を母語としない子どもに対する日本語教育と母語教育の憲法的位置づけについて、若干の考察を行い、公表の機会を得た(栗田佳泰「外国人あるいは外国出身者の子どもの『教育を受ける権利』に関する序論的考察――日本語教育を受ける権利と母語教育を受ける権利の憲法的保障について――」法政理論54巻3・4号(2022年)1-35頁)。 上記論文では、外国人の子どもには憲法上の教育を受ける権利は保障されていないと示唆する政府見解について、教育を受ける権利を含む社会権は外国人には保障されていないとするかつての通説との連関を指摘しつつ、社会権の保障に関し、日本国民に対しても法律による具体化に委ねられているところが大きく、判例上、日本国民の優先的取り扱いが許容され、必ずしもそれと同様の法律による保障が受けられないとしても、そこから外国人には社会権が保障されないとするのは飛躍であると指摘し、日本社会に生きる子どもにとっては、その国籍や出身に関係なく、日本語への習熟は市民としての成長に、また、自らのルーツを知り尊重すべく母語を学ぶことは人格の完成・実現に、それぞれ密接に関わるものであるから憲法的に保障されるべきであって、場当たり的にではなく憲法上の根拠に基づきこうした子どもに対する教育施策は展開されるべきであると論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、当初予定していた各種学会・研究会への参加を見送ったため、本研究の遂行にあたり、研究者同士の相互交流は十分に行えたとはいえない。また、本務校授業のオンライン化等、想定外の作業も増加した。 一方、本年度末には研究成果の一部を公表できている。 以上から、本研究は順調とはいえずやや遅れてはいるものの、進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もオンラインでの調査や書籍等の取り寄せ等により資料を収集し、本研究を進めていく。とりわけ日加比較憲法・行政法の各論的考察を重点的に行う。 対面型の学会・研究会の開催・参加、あるいは聞き取り調査の実施については、今後も十分に見通せない状況にあるが、状況をにらみつつ、機会を捉えていく。また、オンラインによる参加は従前の通り行い、できる限りの研究交流を図っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、各種学会・研究会や打ち合わせ、聞き取り調査のための出張が行えず、そのために予定されていた支出が行えなくなった。状況をにらみつつ、今後はそうした機会を捉えるとともに、研究環境の充実を図るために適宜、支出していく。
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Research Products
(1 results)