2020 Fiscal Year Research-status Report
答申と裁決等の比較対照分析による新行政不服審査法の運用実態の解明と問題点の解決
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20K01271
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大江 裕幸 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (60598332)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 行政不服審査 / 審査請求 / 答申 / 裁決 |
Outline of Annual Research Achievements |
総務省が設けた「行政不服審査裁決・答申データベース」に掲載された答申・裁決について,本研究会大の準備作業として行っていた2019年7月半ばまでに公表された答申,答申についての分析作業(その成果は,基盤研究(C)16K03286の助成による研究成果(大江裕幸「国における行政不服審査法の運用上の課題と展望」行政法研究38号(2021年))として公表している。)を前提に,そこで採用した手法を踏襲し,おおむね2021年3月までに公表された答申を中心に分析を加えた。 現時点での暫定的な状況として,上記成果として公表した内容との関係で,例えば以下のことを指摘することができる。 答申において,相変わらず審理期間の長期化,理由提示の不徹底等を繰り返し指摘するような付言ないし付言的な記述が散見され,運用上の課題が引き続き発生している。とりわけ,審査請求から審査会への諮問までに数百日を超えるような著しい期間を要している事例が相当数見られることが確認された。 裁量が認められる場合の不当性を含めた審査の枠組自体は概おおむね固まりつつあることが確認された。もっとも,その枠組により,いかなる場合に違法とは区別された不当のみを理由に審査請求を認容するべき場合があるのかについての事例の蓄積は十分ではなく,引き続き検討を続けていく必要がある。 必要な調査が尽くされていないことを理由に諮問に係る審査庁の判断は妥当ではないとの結論を示している事例が複数見られるなど,一部にとどまる可能性はあるものの,審理員段階での審理が今なお十分ではない実態が存在することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データベース上で公表されている答申等の分析はおおむね順調に進んでいるものの,所属先の異動等に伴い担当部署とのやりとりに支障が生じることが予想されたことなどから,情報公開請求などを通じた未公表裁決の入手の作業を進めることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き公表答申等の分析を進めるとともに,情報公開請求等を通じた未公表裁決の入手作業を行う予定である。
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Causes of Carryover |
情報公開請求等を通じた未公表裁決等の入手作業を十分に進めることができず,そのために予定していた費用を支出する必要がなかったため。次年度使用は令和3年度請求額とあわせて設備物品費として使用する予定である。
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