2023 Fiscal Year Research-status Report
答申と裁決等の比較対照分析による新行政不服審査法の運用実態の解明と問題点の解決
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20K01271
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大江 裕幸 東北大学, 法学研究科, 教授 (60598332)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 行政不服審査 / 答申 / 裁決 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,令和4年度までに出された答申を整理し,網羅的に分析を加えるとともに,分析結果の一部を公表した。 国の行政不服審査会の答申について,本研究において裁決との比較対照を行うべき平成28年度から令和4年度までに出された答申計503件について,審査庁,処分庁,根拠法・処分名ごとに分類し,それぞれの件数および答申の結論を整理し,一覧化して提示することで,答申として現れた限りではあるが,新法施行後7年間の国の行政不服審査制度の運用状況の一端を明らかにした。また,事案の処理に要した期間について,審査請求から答申までに要している日数を集計し,遅延についての付言等を分析することを通じて,必ずしも「迅速な」審理手続が実現されていないことを確認した。以上は,研究代表者自身の先行業績における国の答申例(令和元年半ばまでの172件分)の分析手法をベースに,その後に出された答申を加えて分析を行ったものである。 また,答申から看取される運用状況の諸問題のうち,審査請求期間,不服申立て資格,不服申立ての利益,口頭意見陳述,職権探知・理由の差し替えと手続保障,諮問説明書と審理員意見書の理由の差異,行政裁量の取扱いといった問題について,注目される答申例を類型化して提示するとともに,本来の制度趣旨や,改正の際の理念等に照らして,評価,分析を加えた。 これらに加え,答申内容の類型化,答申の付言を通じた行政運用の改善(行政過程へのフィードバック)等についても検討を加えており,次年度に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間を延長したことに伴い,件数等が当初の想定よりも相当程度増大したこため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度までに出された答申についての分析結果のうち,未公表の部分について公表するとともに,収集,整理を進めている裁決との比較対照を行い,「新法の運用に伴う問題点を抽出し,共有するとともに,その解決策を探求し,検討の成果として問題点を体系的に整理した上で,その解決策を提示する」という研究計画で提示した研究目的に即した形で研究成果を取りまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
研究期間の再延長に伴い,これまでの研究成果の補充,取りまとめのために必要となる予算の一部を次年度に繰り越すこととしたため。
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