2020 Fiscal Year Research-status Report
社会のデジタル化に対応した租税実体法および租税手続法のあり方に関する研究
Project/Area Number |
20K01278
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡辺 徹也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10273393)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 経済のデジタル化 / プラットフォーム / 法人税 / 国際課税 / シェアリングエコノミー |
Outline of Annual Research Achievements |
経済のデジタル化における国際課税の問題については、OECDの取組みの解明から始めることになっていた。OECDより提示された解決策の案は、市場国に対し適切に課税所得を配分するためのルールの見直しという「第1の柱」と、軽課税国への利益移転に対抗する措置の導入という「第2の柱」から構成されるものである。当初は、2020年末に各国の合意(コンセンサス)を得た解決策が示されることになっていたが、この予定は新型コロナウイルス等の影響で2021年半ばまで延期されることになった。一方で、OECDは、2020年10月12日に、第1の柱、第2の柱のそれぞれについて「青写真」を示す2つの報告書及びインパクト・アセスメントに関する報告書(合計3つの報告書)を公表した。これらが、2020年に大きな動きである。 仮に、コンセンサスが得られない場合には、一方的な課税措置や貿易紛争の増加により、最悪のシナリオで世界のGDPが1%以上減少する可能性が指摘されている。合意なき一方的課税は、実質的な二重課税と紛争解決手段の欠如を招く危険性がある。ここでいう一方的な課税措置の代表例が、デジタル・サービス税(DST)である。今年度は、これらOECDの動向やデジタルサービス税について、研究会等で報告を行い、その成果を幾つかの論考にまとめることができた。 デジタル化と課税に関する課題は、上記に限られるわけではなく、最近耳目を集めているウーバー・イーツのようなシェアリング・エコノミーに関するものがある。暗号資産やクラウド・ファンディング等についても課税上の論点はある。そのなかでも今年度はシェアリング・エコノミーについて論考を公表した。 それ以外としては、通達課税や委任立法に関する論考を公表した。これらも、社会のデジタル化に対応する課税ルールの構築に応用が利く重要な論点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、経済のデジタル化に関する検討が主であったが、シュエアリング・エコノミーについても論考を公表することができ、研究自体は概ね順調に進んでいる。地方税については、ふるさと納税に関する最高裁判決を取り上げて検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
OECDにおける合意が約半年先送りされ、大きな決定は次年度にずれ込んだが、その過程においてOECDや国連が発表したそれぞれの構想や考え方を検討することができたため、研究対象(題材)に困ることはなかった。この領域は動きがあるところなので、引き続き国際機関と加盟各国の動向に注意することにしたい。 一方的な措置としてのデジタルサービス税については、日本も導入を検討すると聞いている。ただし、そういう意味で欧州各国等に足並みを揃えることが本当によいことなのか、日本としてのあり方を考える。 シェアリングエコノミーについては、コロナ禍における状況の変化やそこで働く人たちへの必要な手当について検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため調査研究旅行等が十分にできなかった。
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Research Products
(1 results)