2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K01289
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
渡辺 康行 大阪経済法科大学, 法学部, 教授 (30192818)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 家族と憲法 / 夫婦同氏制違憲訴訟 / 三段階審査 / 法の下の平等 / 立法者による制度構築の裁量統制 / 社会通念 / 裁判官研究 / 司法権の対象と限界 |
Outline of Annual Research Achievements |
憲法訴訟においては、権利制約の正当化審査という構成をとるか、立法府による制度構築の統制という構成をとるかによって、審査の方法や密度などがかなり異なってくる。2023 年度は、二次にわたる夫婦同氏制違憲訴訟を素材として、この問題について検討することを試みた。その際には、最高裁判所裁判官の研究という問題関心をも踏まえて、寺田逸郎最高裁判所長官と三浦守最高裁判事による個別意見に注目した分析を行った。その成果は二本の論文として公表した。とりわけ後者は、弁護士と研究者の共同研究の成果公表の場が判例時報誌によって提供され、その連載第1回目の役割を演じることになった。 近年の最高裁による憲法判断は、社会通念の変化に基礎を求めるものが目立っている。しかしその手法については、賛否が分かれている。2023年度は、この問題がしばしば注目される法の下の平等の領域ではなく、それに先行して別の領域でも同様な議論があったことを指摘する論稿を公表した。これによって、社会通念を援用することを単純に批判することには注意が必要であること、憲法論に限った議論では視野が限られることなどについて、論ずる機会となった。 その他、実質的には2023年度以前の業績であるが、司法審査の対象に関する論稿と、元最高裁判所裁判官に対するインタビューを、私が編集した著作に再録している。特に後者は、大橋正春・鬼丸かほる両元判事にご協力いただいたものであり、大変貴重な知見を提供しているものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度に『憲法裁判の法理』という論文集を公刊したことにより、本研究課題はかなりの成果を上げることができた。2023年度は、同書で残した課題である、立法者の制度構築の裁量をいかに統制するかについて、考察を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
家族と憲法にかかわる領域を主な素材として、立法者による制度構築の裁量統制という問題について、論文の公表を進めたい。その蓄積を基に、近い将来に新たな論文集を公刊したい。
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Causes of Carryover |
2023年度は勤務先が変わり、業務内容も変化したため、その対応に時間を要した。また科研費の使用手続などについても、前任校とは大きく異なるため、習熟を要した。2024年度は、学内手続などに対応できるように努め、当初の予定に沿って科研費を使用したい。
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