2021 Fiscal Year Research-status Report
児童福祉施設の長・里親の権限と親権の関係に関する憲法学的検討
Project/Area Number |
20K01293
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
赤川 理 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (50404950)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 憲法 / 親の権利 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「子どもの福祉」概念と「憲法上の親の権利」の観点から、児童福祉施設の長・里親の権限と親権の関係を整理することであり、ドイツにおける議論を参照してわが国の憲法学にも「子どもの福祉」概念と「憲法上の親の権利」の観点を導入することが有益であることを明らかにしようとするものである。 この目的を達成するために、研究2年目にあたる2021年度は、ドイツの憲法学の議論における「憲法上の親の権利」の位置づけについて、この問題に関する比較的最近のドイツの文献を中心に検討を行った。 2021年度の研究において、「憲法上の親の権利」に関するドイツの議論を検討する中で、研究の成果として、以下の点が重要であるという認識を得た。①ドイツ連邦共和国基本法(以下、基本法と呼ぶ)において、基本法6条が婚姻と家族について定めているが、基本法6条について解釈する際、考察する際には、基本法の体系を考慮して、学校制度について定める基本法7条との関連を踏まえて解釈すること、考察することが必要である。婚姻と家族という問題領域も、学校制度という問題領域も、問題領域の性質それ自体からして、子どもと親に深くかかわる問題領域であるという共通点を有しており、基本法の体系においても、基本法6条と基本法7条は深く関連していると考えられるからである。②「憲法上の親の権利」について考察する際には、連邦憲法裁判所の判例を視野に入れながら、婚姻という概念について再検討すること、家族という概念について再検討すること、親という概念について再検討することが必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「子どもの福祉」概念と「憲法上の親の権利」の観点から、児童福祉施設の長・里親の権限と親権の関係を整理することであり、ドイツにおける議論を参照してわが国の憲法学にも「子どもの福祉」概念と「憲法上の親の権利」の観点を導入することが有益であることを明らかにしようとするものである。研究1年目にあたる2020年度において、「子どもの福祉」について研究を進め、研究2年目にあたる2021年度において、「憲法上の親の権利」について研究を進めることができた。これにより、ドイツ連邦共和国基本法(以下、基本法と呼ぶ)6条について、「子どもの福祉」ということを手がかりに理解を深めることができた。また、基本法6条について解釈する際、考察する際には、基本法の体系を考慮して、基本法7条との関連を踏まえて解釈すること、考察することが必要であるという認識や、「憲法上の親の権利」について考察する際には、連邦憲法裁判所の判例を視野に入れながら、婚姻という概念について再検討すること、家族という概念について再検討すること、親という概念について再検討することが必要であるという認識を得るなどの成果があった。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、研究計画の3年目にあたり、研究計画の最終年度であるので、1年目と2年目の研究成果を踏まえて、児童福祉施設の長・里親の権限と親権の関係は、憲法の観点からどのようにとらえられるべきかという本研究の課題に対して、現時点での答えを明らかにすることを目標とする。その際に、児童福祉施設の長と国家の関係はどのようにとらえられるべきか、里親と国家の関係はどのようにとらえられるべきか、里親を「家族」として位置づけることが可能かどうか、という視点が必要になってくると考えられる。こうした問題を検討するために「婚姻と家族」という問題に関する最近のドイツの議論などを検討の素材とすることを予定している。
|
Research Products
(1 results)