2020 Fiscal Year Research-status Report
災害法制における官民交錯領域の再整序と理論的基盤の形成に関する研究
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20K01296
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大脇 成昭 九州大学, 法学研究院, 教授 (30336200)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 災害対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、近時の災害にかかる法制度をめぐる状況の全体像把握と整理を行う予定であったが、概ね予定どおりに研究を遂行することができた。まず作業の足がかりとして着目した具体的事象は、社会的な関心事となっている新型コロナウイルス感染症対策である。中でも、国による金銭給付、特に地方公共団体向けの「地方創生臨時交付金」に焦点を当て、これを自然災害が発生した際における、国等による公費での支援策との比較をしつつ、その給付にかかる法的統制などについて考察した。 自然災害への対応には様々なフェーズが存在するが、災害発災直後の緊急対応時を除き、どのフェーズにおいても何らかの金銭給付が行われることが多い。新型コロナウイルスの場合も、感染症の蔓延状況が多段階的に継続していることから、自然災害への対応と同様に、継続的な金銭給付が行われている。 そこで地方創生臨時交付金の導入経緯や制度の概要、運用状況とその問題点などを取り上げ、多角的に考察を行った。公表論文「非常時における国の金銭給付に関する一考察」はその研究成果の一部である。 今般の新型コロナウイルス感染症対策としての各種給付の創設は、休業補償への充当の可否に代表されるように、地方創生臨時交付金の使途をめぐる問題をはじめ、社会において様々な議論を巻き起こした。緊急時であっても各種給付には、事業者等の私人に対する支援の原資が「公金」であることの制約が存することを認識させた結果となった。これは自然災害の復旧・復興時などにおける公金の取り扱いの問題を考える上でも、非常に有益なことである。自然災害やパンデミックなど、広義のリスクに包摂される「非常事態」における行政活動でも、平時におけるのと同様の、公法上の制約が存することを改めて認識させるとともに、そのことを前提とした、有効な対策のあり方について、今後の議論の素材を抽出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、本年度は移動の制限が加えられた。加えて所属機関の附属図書館等も利用が大幅に制限され、諸資料へのアクセスも困難となった。結果的に当初予定していた資料収集等の多くが一時的にできなくなり、研究の進捗に懸念があった。 しかし所属機関においては徐々に、臨時的に電子資料へのアクセスが拡大されたり、書籍等の資料の購入への影響が最小限に抑えられたりすることとなり、結果的に平時とさほど変わりのない水準での資料収集が可能となった。 それゆえに本年度の研究活動は、結果として概ね順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を遂行してゆく上での喫緊の課題はやはり、新型コロナウイルスの状況である。すなわち、遠隔地へ赴いての資料収集やヒアリング調査などは、大幅な制約を受けるものと予想される。そこで、本年度(2020年度)に行ったような、移動を伴わない資料収集を継続し、その分析や考察を進めてゆくこととなる。本年度は手探りの作業が続いたものの、1年間かけて、相当程度に移動や訪問を伴わない情報収集、および研究遂行のスキルを身に付けることができたと考える。このスキルは、今後の研究活動の推進に大きく資するものといえる。 本年度行った法制度に関する調査に加えて、研究期間2年目となる翌年度(2021年度)は、災害救援や復旧・復興にかかる活動についても資料収集や調査を行うこととなる。遠隔地に赴くことなく効率的に情報収集をしてゆくため、情報機器の調達も進めつつ、実行的に有益な資料を収集・分析をして、研究を推進してゆくこととする。
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Research Products
(1 results)