2021 Fiscal Year Research-status Report
災害法制における官民交錯領域の再整序と理論的基盤の形成に関する研究
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20K01296
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大脇 成昭 九州大学, 法学研究院, 教授 (30336200)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 災害対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主として、災害にかかる日本国内の近時の取り組みや制度について広く情報の収集などを行うことを計画していたが、結果的に概ね予定どおりに研究を進めることができた。2021年は東日本大震災から10年を迎えることもあり、防災・減災・復旧・復興などに関する有益な取り組みの例や現状の報告、問題提起・提言などが幅広くかつ数多くなされた。本年度はこれらの資料を様々な手段によって収集し、本研究の視点から分析することを通じて、来年度以降の研究のための基盤を整えることができた。 なかでも復興に関しては本研究の着目ポイントである「官民交錯領域」に深くかかわるものとして、特に個人所有住宅の再建問題がある。この再建に公費を投入できるかという論点が以前から存在する。この点は本研究において多面的に考察を深めてゆく予定であるが、本年度からこのような論点を中心とする、災害についての「公的救済」にかかわる研究会に参加する機会を新たに得た。この研究会は法律分野の研究者以外にも、弁護士や都市工学の研究者などで構成される学際的な集まりであり、新たな知見を得るのに極めて有用な場となりつつある。今後はこの場で自らも研究報告をして考えを深化させるなどすることを通じて、今後の研究活動に役立てていきたいと考える。 次に本研究のこれまでの成果の一環として、災害時の避難と救助に関する論考をまとめた。その中では避難にかかる情報の法的位置付けや変遷などを中心に検討し、多角的に問題点を検証した。この論考は来年度以降に公表する見通しである。 また昨年度に引き続き、今般の新型コロナウイルス感染症対策としての国による広義の給付活動について、(これも広義の)災害に対応する国家の役割として位置づけ、情報収集を行った。 総じて本年度は、今後の研究推進のための基盤整備に努め、その目標を達することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、本年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、直接・間接に移動の制限が加えられた。当初予定していた資料収集やヒアリングは、必然的に抑制せざるをえなくなった。 しかし昨年度とは異なり、研究の進捗にはほとんど影響しなかった。というのも、所属機関の図書館をはじめとする施設利用が平時におけるのと同様に可能だったことに加えて、電子資料へのアクセスが格段に拡大されるなどして、より多くの資料を居ながらにして入手することが容易となったからである。すなわち一段と進んだ「新型コロナ対応」を研究環境において実現することができた。結果的に平時と変わりのない、あるいは従来を上回る水準での効率的な資料収集が可能となった。また、前述の研究会への参加も、当然のようにオンラインで可能となり、遠隔地(開催地である大阪府)へ赴くことなく、充実した学術的交流が可能となった。 以上のような、新型コロナウイルス感染症の影響に起因する研究環境の(マイナス面を補って余りある)プラス方向の変化により、本年度の研究活動は、結果として概ね順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまでと同じく、新型コロナウイルス感染症の影響下での研究が続くこととなる。以前であればそれは専らマイナスの効果をもたらしたが、電子資料へのアクセス拡大やオンラインでの交流が促進されることから、これをプラスに捉えて、さらに研究を推進してゆく所存である。すなわち物理的移動を伴わずに遠隔地の資料や情報を集めるなどの一層の工夫をしてゆく。また、場合により必要となるヒアリング調査についても、予めの打ち合わせをした上で、面談調査はZoomなどのオンラインツールを駆使して行うなどの方法を模索する予定である。 本年度行った各種の資料収集・調査や分析によって得られた研究の基盤をもとに、来年度はより幅広く、理論面との融合を図るなど、本研究の最終的な到達点を目指して、内容の充実化に努めてゆくこととする。
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