2022 Fiscal Year Research-status Report
社会縮小化時代における地方公共団体の企業的活動の方向性と公法的規制理論
Project/Area Number |
20K01300
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田村 達久 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60304242)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 公企業 / 公営事業 / 企業的経営 / 行政法的規制 / 法治主義 / 法治国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題においては、社会縮小時代における地方公共団体の企業的活動の方向性として、その持続性の維持についての法制度・法政策のあり方とともに、当該活動に対する公法的規制に係る理論の研究も進めることになっている。本年度は、日本におけるその公法的規制理論の課題に比重を置いてその研究を進めた。そこで、東アジア諸国における公企業に対する行政法的規制に係る理論研究の動向・方向性を調査することにした。このことにより、これまでとりわけヨーロッパ(特にドイツ)の関係の法制度・法理論に着目してきた本調査研究に別の視角から光を当てて考察することが可能となり、本研究をより広い視野から位置づけ、検討することができることになった。例えば、令和4(2022)年12月3日・4日に開催された東アジア行政法学会学術大会における「公企業に対する行政法的規制」をテーマとする台湾及び韓国の各研究者の報告が当該国の公企業の状況及び行政法的規制の理論の動向・方向性を明確にした。すなわち、台湾では、公営事業の増加の傾向が見られるなかで企業経営方式が望まれるとされるものの、法治国家の公益原則や人権保障の観点からの人事・財務・業務に関する行政的規制・監督法制のあり方に係る検討がさらに求められていた。また、韓国では、地方公企業法に基づく公企業が411団体存在するほか、地方自治団体出資・出捐機関の運営に関する法律の適用機関が845機関にも上る状況において、民主化や法治主義の強化の観点から公企業法原則の再検討が迫られていることが明らかとなった。近隣資本主義国においても、地方公共団体の企業的活動の公共性・公益性を保持するための公法的規制及びその理論の必要性が強く要請されているといえよう。このような観点を意識した本研究課題の研究遂行の重要性がより明瞭となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本務校において令和4年9月21日から所属の学部及び学術院において学部長及び学術院長の職(任期2年)に就いたことから、本務校の学内業務の負担が一段と重くなり、当該業務の処理、対応に多くの時間を取られる状況が続いている。かつ、所属の学部・大学院における授業負担も多い。このため、本研究課題の研究遂行に多くの支障が生じてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を予防するとの外在的環境制約のある状況であること、また、本務校での役職負担が増加したとの環境下でもあることから、引き続いて文献等による調査・研究を中心に研究を遂行する。ただし、5月中旬(連休後の8日)から、制約の大きな緩和の傾向が見られるため、国内現地実態調査の実施の可能性をできる限り探って研究を進めたい。また、実質面においては、「住み続けられるまちづくりを」という持続可能な開発目標(国連のSDGs11番)の観点を引き続き意識して、「縮減する都市」に関する理論動向にもさらに目を向けるとともに、人工知能(AI)等の先端技術の活用による企業的活動の可能性と問題の考察も本件研究課題の最終年度において進める。
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Causes of Carryover |
本務校において令和4年度途中(9月21日)から学部長職・学術院長職に就いたこと結果、さらに当該職に関する業務が激増したことや、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の防止という外在的環境制約から、研究時間が大きく制約されるとともに、国内外の実態調査も実施しえなかったことがその理由である。 研究の進展に伴って検討すべき課題も新たに生じてなどしているため、外国語文献を含む関係する必要となる文献の購入や、これまで使用してきたパソコン、プリンタ及びソフトウエアなどの研究遂行に不可欠な情報通信機器についての更新が必須となったことからするそれら機器の新たな購入、そして、今後の実態調査実施に必要となる旅費などに使用する計画である。
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