2023 Fiscal Year Research-status Report
社会縮小化時代における地方公共団体の企業的活動の方向性と公法的規制理論
Project/Area Number |
20K01300
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田村 達久 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60304242)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 持続可能性 / 法規範 / 公法理論 / 企業的活動 / 公営企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会縮小化時代における地方公共団体の企業的活動の一方向性として、その持続可能性の確保が重要となる。その典型である上・下水道、病院、交通等の地方公営企業は、住民の生活の基盤インフラの提供であるからだ。そこで、持続可能性の確保に係る法的判断枠組みあるいは法理論を考察することが重要となる。また、その際、地方公共団体の企業的活動に係る基準の法定化の有無の影響や、その適用の射程が問題となる。日本の地方自治法や地方公営企業法等の制定法規範は、当該企業的活動に対しては、積極的でも消極的でもなく、いわば中立的であるからだ。そこで、外国法制、特にドイツ法を比較参照して、その持続可能性の確保に関係する公法的規制・規範・理論のあり方を考察した。 ドイツでは、各州の地方自治法において、公共目的適合性、地方公共団体の活動能力適合性及び役務提供の需要適合性そして(私人による企業的活動に対する)補完性の3事項が、地方公共団体の経済的活動の許容性を認める上での判断基準となっているが、これらは、基本的に地方公共団体の企業的活動の重大な拡大にも適用されるものの、既存の当該企業的活動体やその活動を制約するものではないされる(Knaff, Oeffentliches Wirtschaftsrecht, 3.Auflage, 2023, Nomos, S.230f.)。そうだとすると、そのような法規範の定めがあることは、既存の企業的活動の持続可能性を根拠付ける又は制約することに影響を与えないかもしれない。しかし、端的には需要適合性の観点は、社会縮小時代においては地方公共団体の既存の企業的活動の持続可能性を否定する方向を肯定するものと理解されえないではない。そのため、社会縮小化時代における地方公共団体の企業的活動に係る公法的規制及びその規範のあり方、さらにその法理論の考察を継続することが必要不可欠である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本務校において令和4年9月21日から所属の学部及び学術院において学部長及び学術院長の職(任期2年)に就いていること、また、2023年度は所属学部を含んだ組織全体の再編成作業への取り組みが行われていたことから、役職上、当該業務を中心として2023年度の全体を通じて学内業務処理に割かなければならない時間が激増したこと、さらに、その影響で身体的及び精神的な面での負担が増加して体調を大きく損なったことが主な原因となり、本研究課題に取り組む時間的余裕が極めて少なくなり、本研究課題の研究遂行が滞ってしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本務校において責任者たる学部長職・学術院長職に現在も就いていることから生じる時間的制約に鑑みて、ヒアリングなどの実態調査を実施するよりも関係文献の調査とその検討に注力し、それを中心として研究を推進する。そして、これとともに、研究成果のとりまとめも進めていく。
|
Causes of Carryover |
本研究課題の研究期間の延長申請が承認されていること(2024年3月15日承認)に伴うものであり、関係文献の購入を中心として研究経費を使用する計画である。
|