2021 Fiscal Year Research-status Report
反致論の継続の背景と近時の反致へのニーズに関する研究
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20K01308
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩本 学 富山大学, 学術研究部社会科学系, 准教授 (70552511)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 反致 / 外国判決の承認 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,昨年度に引き続き各国の反致規定の状況を調査しつつ,超国家的法規である各種条約やEU法の同状況につき精査し,これに並行して,19世紀の各国判例及び学説の整理を行い,来年度以降の研究の基礎資料の作成に努めた。また,わが国における反致論の転換の手掛かりとして,外国判決承認論の隆盛,が鍵となることを見出したことから,この論点についても改めていくつかの点で検討を行った。 成果報告としては,本研究全体の中間報告的位置づけで,「renvoiを巡る近時の法状況とわが国法の立脚点」(関西国際私法研究会,2021年9月)と題する報告を行い,出席の研究者から今後の研究に対して有意義な示唆を得た。その他,上記の通り派生して検討した外国判決承認論に関わるものとして,「Depuy社を被告とする製造物責任訴訟にみる国際民事紛争処理法上の諸問題」(国際取引法学会中間報告会,2021年9月)や「カジノでの遊興を目的とする資金貸付けを巡る香港高等法院での欠席判決と民訴法118条の公序」(渉外判例研究会,2022年2月)等の報告を行った。これらの報告を踏まえたものとして,論文や評釈の形で4本を公表した。そのほか,反致については各事項毎にその要否の検討を行うことにも意義があるとの視点から,特にわが国では反致規定の適用対象となりうる親子関係の準拠法に関わる検討を行っているが,関連する裁判例の評釈につき執筆の機会があったため,この論点に関するものも3本公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の積み残しについては,今年度で概ねカバーでき,また今年度予定していたEU国際私法についての検討は概ね終了できた。もっとも,特に海外法学データベースや現地での資料収集を経て,最新の議論についても網羅的に文献調査を要すると考えているところ,Covid-19等の影響によりこの作業が十分に果たせず,またそれゆえ資料不足となりうると考える論点についての原稿の公表は控えているという状況である。以上から,このような評価とする。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目で各国法の状況や超国家法期における反致の扱いについての基礎資料が一定程度完成した。次年度は必要に応じてこれをアップデートさせつつ,反致のニーズについて比較法を通じて検討を行い,とりわけ近時の米国でのそのニーズを分析することで,反致論の現在的位置づけを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続きCovid-19の影響で,支出対象の出張が実現できず旅費に充てた予算が執行できなかった点が大きな要因である。今年度は,資料収集目的の旅費については図書のほか論文単体での購入,や,研究報告用に確保していた旅費については引き続き続くであろうオンライン報告用に必要な用具等の購入,に充てることで,代替的な執行を行い研究を遂行しつつ,Covid-19の状況を見極めて出張の実現を判断したい。
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Research Products
(14 results)