2020 Fiscal Year Research-status Report
Hybrid Tribunals and the International Criminal Trial System Quested by Asia and Africa
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20K01309
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
稲角 光恵 金沢大学, 法学系, 教授 (60313623)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際刑事裁判 / 国際刑事法 / アジア / 国際犯罪 / レバノン特別法廷 / 欠席裁判 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は3年間で行うことを計画しており、研究期間内でアジアとアフリカ地域における国際刑事裁判を研究する。研究初年度の令和2年度は、第1にアジア地域のハイブリッド法廷の特徴と成果の分析を行うことを予定していた。しかしカンボジア法廷やアジア独自の国際刑事法観を調べるための海外での渡航調査や資料収集は、新型コロナ・ウィルスの影響で実施することはできなかった。そのため現地調査や海外学会渡航は諦め、資料収集可能な範囲内で行える研究へとシフトさせた。 まず第1に、アジア・アフリカ地域のハイブリッド法廷の分析の比較を行うため、レバノン特別法廷について研究を行った。レバノン特別法廷が欠席裁判により有罪判決を下した点を取り上げ、完全な欠席裁判の許容がレバノン特別法廷のみに見られる特徴であり、国際刑事裁判所やその他のアド・ホック法廷では一部の手続で被疑者/被告人の欠席を認める方向へと制度を改変しつつも完全な欠席裁判は許容していない状況にあることを指摘し、レバノン特別法廷の国際刑事法及び国際人権法との抵触可能性について考察した。この研究成果は、「国際刑事裁判における欠席裁判――国際刑事裁判所(ICC)とレバノン特別法廷の最近の動向」と題して、『金沢法学』第63巻2号(2021年3月)に公表した。 また、アジアにおいて国際刑事法の適用を国際社会が要請し注目している例として、ミャンマーにおけるロヒンギャ族に対する迫害問題がある。同問題が国際司法裁判所にて審理されている状況を取り上げ、判例分析を行った。研究成果は、国際人権法学会の学会誌『国際人権』に公表した(「ロヒンギャ族に対するジェノサイド防止のための仮保全措置命令――ジェノサイド条約の適用事件(ガンビア対ミャンマー)(国際賞裁判所2020年1月23日仮保全措置命令)」『国際人権』第31号(2020年10月30日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度の前半は、新型コロナ・ウィルスCovid-19対策の措置としての緊急事態宣言を受け、大学の決定により研究室のある大学キャンパスへの出入りが禁じられ、物品の発注も大学事務の一部停止に伴い行うことができず、予定していた研究活動をほとんど行うことができなかった。研究室への出勤が可能となって以降、研究に着手したが、海外での資料収集や学会出席は叶わず、海外への専門書の注文や入手も遅れ、研究全体の進行がやや遅れている。困難の中でも令和2年度後半に実施した研究の成果を発表することができ、事態は改善に向かっており、令和3年度には遅れを取り戻すことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究でやや遅れている部分を令和3年度は取り戻すよう研究を進める。研究を進めてその成果発表を着実に行っていきたい。2021年5月22日に開催される世界法学会の研究大会において研究成果の一部を「アジア・アフリカから見る国際刑事裁判秩序」と題して学会報告する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ・ウィルスCovid-19の対応として発令された非常事態宣言により、令和2年度前半は物品の発注を含む研究のための活動が一切行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。令和2年度中に届かなかった洋書や資料など、令和3年度に研究の遅れを取り戻す予定である。
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