2021 Fiscal Year Research-status Report
Hybrid Tribunals and the International Criminal Trial System Quested by Asia and Africa
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20K01309
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
稲角 光恵 金沢大学, 法学系, 教授 (60313623)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際刑事裁判 / 国際刑事法 / アジア / アフリカ / ハイブリッド法廷 / 国際犯罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は3年間で行うことを計画しており、研究期間内でアジアとアフリカ地域における国際刑事裁判を研究する。研究2年目の令和3年度は、国際刑事裁判制度の全体像の理論的把握を行い、学説の争いを整理するとともに国際刑事裁判の将来像を学界に提起することを試みた。これは申請時当初は研究最終年度に行う予定であったが、国際法における最新問題として世界法学会からの要請を受けたため、学会研究大会(2021年5月22日)で報告するとともに、学会誌に論説として公表した(2022年3月)。 研究大会報告及び論説では、国際刑事裁判制度を国内裁判所と国際刑事裁判所(International Criminal Court,以下ICC)の二元構造と単純化する理解が誤りであることを指摘し、刑事裁判機関の数の増加と多様化と多元化の現象を論じた。現代国際法における刑事裁判機関の増加と多様化の現実を踏まえ,国内的要素と国際的要素が混合されたハイブリッド法廷や地域的国際機関による刑事裁判管轄権をアジアとアフリカ諸国が求める傾向を分析し指摘した。アジアとアフリカから地域的要素を反映させた裁判機関が提言されているが、国際法上の犯罪の処罰の徹底及び法の支配並びに人権の尊重といった人類的課題を考慮に入れて慎重に考える必要性があることに注意喚起した。 申請時の計画では、アジア地域のハイブリッド法廷の特徴と判例及びその影響の分析を行うことを予定していたが、カンボジア法廷やアジアやアフリカ独自の国際刑事法観を調べるための海外での渡航調査や資料収集は、新型コロナ・ウィルスの影響で未だ実施することが不可能な状況であった。そのため現地調査や海外学会渡航は諦め、資料収集可能な範囲内で行える研究へとシフトさせていたが、学界からの要請に応える形で研究成果を発表した次第である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度は、新型コロナ・ウィルスCovid-19対策の措置の影響を受け、アジアとアフリカの国際法廷の現地調査など、海外で予定していた研究活動を全く行うことができなかった。研究環境のみならず、国際的な裁判所も事件処理がコロナ禍で遅延され、実務も停滞していた状況にあったため、研究対象の状況も通常とはいえなかった。海外の専門書の入手も遅れ、研究全体の進行が予定どおりに行えていない。しかし、上記のような困難の中でも学界から注目されている研究課題であり、研究大会や学会誌での研究成果発表を依頼され、成果発表の場には恵まれたと感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究で遅れている部分を令和4年度は取り戻すよう研究を進める。コロナ禍で難しいが資料収集のための海外出張が可能であるのか、検討したい。代替としてオンラインで開催される海外の学会などでも研究成果を得るべく対象として考えていく。アジアとアフリカの地域研究を現地調査なしにどこまで行えるのか課題はあるが、研究を進めてその成果発表を着実に行っていきたい。
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Causes of Carryover |
申請時予定していた海外出張が全く行えなかったことと、海外の洋書や資料が届かないこと、世界的な半導体不足の影響を受けて希望する機器の購入ができなかったことなどから、申請時に予定したような計画的な支出とならなかった。繰り越し分と合わせて研究を進めていきたいと考えている。
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