2021 Fiscal Year Research-status Report
The Institutional and Operational Developments of the International Courts and Tribunals in "Global Public Area"
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20K01311
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 啓亘 京都大学, 法学研究科, 教授 (80252807)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際司法裁判所 / グローバルな公共空間 / グローバル・ガバナンス / 司法機能 / 国際立法 / 決定的期日 / 安全保障例外 / 世界貿易機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、領域紛争の分野での国際裁判所の紛争解決機能を精査し、そこで用いられている「決定的期日」概念の機能について考察を加えた。この概念は、紛争が結晶化した日以前における主権者の行為とその後の行為とを区別し、問題の領域に対する主権の確立又は確認のためには前者のみを考慮すべきとする機能を有するが、国際裁判所は、その裁判例を通じて徐々にこの機能を明確にし内容を豊かなものにさせていった。それを論証した研究成果は、「領域紛争における「決定的期日」の意義―国際司法裁判所の裁判例を中心に―」岩沢雄司・岡野正敬編集代表『国際関係と法の支配 小和田恆国際司法裁判所裁判官退任記念』(信山社、2021年)147-179頁として公表された。また、この「決定的期日」概念と前年度考察した「時際法の原則」とを適用する観点から、国際裁判所による日本の領土問題の解決可能性についても考察し、その研究成果も、「領域紛争における時間的要素とその規律─日本の領土問題への具体的適用について─」柳原正治・兼原敦子編『国際法からみた領土と日本』(東京大学出版会、2022年)177-202頁として公表されている。 貿易レジームにおいて、ガット第21条に定める安全保障例外を世界貿易機関(WTO)の準司法機関としてのパネルがどのように判断するかについても、国際法制度のガバナンスの実施例とみることができることから、過去のガットの実行を含め、パネル等の判断を検討し、「GATT/WTO体制における「安全保障例外」の審査可能性とその意義」『エネルギー資源確保に関する国内外の法的問題の諸相 2015~2016年度エネルギー資源確保に関する国際問題検討班報告書』(日本エネルギー法研究所、2021年)81-133頁に表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グローバル・ガバナンスにおける国際裁判所の役割を検討する際に、その前提的考察となる国際裁判所の機能を確認する作業は、前年度に引き続き、順調に進んでいる。ただし、昨年10月より京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻長(法科大学院長)に就任したこともあり、役職上研究時間に制約を受け、本年度後半は十分な研究遂行が難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度不十分であった国際海洋法裁判所や投資協定仲裁など、様々な国際裁判所及び(準)司法機関の活動を取り上げ、各レジームにおける国際裁判所の役割とガバナンスへの貢献を検討していくことにしている。
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