2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K01316
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
黒神 直純 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (80294396)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国連 / 国連憲章 / 国際機構 / 行政裁判所 / 脱退 |
Outline of Annual Research Achievements |
国連内部に生起する法体系において、規範の規律対象について見ると、組織を規律する「組織法」と呼ぶべきものもあれば、憲章25条に基づく安保理の決定(制裁決議等)のように、加盟国を直接の名宛人として作用を及ぼすような「作用法」と呼ぶべきものもある。また、成立形式から見れば、内部機関が制定する規則・決定もあれば、機関や加盟国が積み重ねた実行が法規範にもなる。これらの総体が国連内部法の体系と考えられる。 この国連内部における法規範を整理し、かつそれらが生成されるメカニズムに着目してその全容を解明する必要がある。 2020年度の研究としては、まず、前提的考察として、国連憲章の起草過程とそれに関わる議論を網羅的に検討し、起草者の意図を探る基礎研究を行った。その成果の1つとして、とくに国連行政裁判所の設立にかかわる点については、論文として発表した(「国連における行政裁判所制度の確立」『現代国際法の潮流Ⅰ』(東信堂、2020年)241-257頁)。憲章の起草から国連設立後にかけて、準備委員会および執行委員会による検討を考察した。結局、国連行政裁判所の権限については、各国間の意見対立の残るまま裁判所規程の採択に進展していったことを明らかにした。 また、昨今話題となっている国際機構の脱退問題を探求する過程で、国連憲章起草の際の同問題についても、論文として発表した(「国際機構からの脱退に関する一考察」『岡山大学法学会雑誌』70巻3・4号(2021年)67-96頁)。国連憲章には、脱退に関する規定はないものの、サンフランシスコ会議での合意、すなわち、加盟国が、例外的な事情のために、脱退しかつ国際の平和および安全を維持する責任を他の加盟国に委ねざるを得ないと考える場合など4つの場合に、脱退が認められていたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大により、予定した通りに出張が行えなかった。もちろんZoom等のオンラインにより、いくつかの部分については補うことができたが、それでも資料や情報の収集に多少の支障が生じ、研究の進捗もやや遅れているのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、組織法の研究を中心に行う予定である。ここでは、諸機関が規則・決議を採択することによって形成される成文法規範と、諸機関の慣行による不文法規範の研究が中心となる。新型コロナウィルスの感染拡大状況を見据えつつ、できるだけ計画通りに研究を進める所存である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、研究の進捗が遅れてしまった。旅費をはじめ十分に経費を執行できなかったため、次年度使用額が生じてしまった。
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