2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K01323
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中川 晶比兒 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (20378516)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生産性 / 競争 / 企業間格差 / 無形資産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は大きく分けて二つの側面から研究を行った。第一に、研究テーマの核となる「生産性」の基礎的な理解を固めることにより、計量経済学における生産性とどのような距離を取って本研究を進展すべきか、基本的な方向性を模索した。全要素生産性(TFP)及び労働生産性の定義と推計手法を確認した後に、全要素生産性の過大評価または過小評価が起こる場合を調査した。その結果、独占禁止法において評価される効率性とは、計量経済学にいう生産性そのものではないことを再確認した。すなわち、法的に評価されるのは効率性そのものではなく効率性の改善であり、しかも原則として、測定可能な算出の改善(価格低下等)に反映されるもののみが考慮される。このような視点の違いをわきまえておくことは、生産性格差と競争の関係に関する本研究を遂行するうえで重要なステップである。第二の作業として、本研究の分析視点である個別産業ごとの特性について理解を深めた。地方銀行、コード決済、クラウドコンピューティングにおける競争状況を調査すると共に、農業については買い手としての農協に着目し、ゲーム理論を用いて買い手間競争の分析を行った。これらのうち後者の研究成果を公表し(後掲「独禁法違反行為の実効性について」)、買い手間競争を分析する際には、生産者育成のための情報提供といった側面でも競争を把握することが重要であることを学会発表で指摘した。このような競争のとらえ方は、生産性分析の文脈においては無形資産投資に通じるものであり、また地方銀行が再生するために取り組むべきと指摘されている、広い意味での地域企業の生産性改善サービスとも共通性を持つことを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では競争と生産性の関係に関する先行研究を最初の検討内容としていた。しかし、英国での調査と連動する研究内容であるため、これを後回しにし、個別産業の特性に関する研究を先取りすることにした。この作業順序の組み替えは、結果として当初の研究計画を大きく改善することになった。というのも、研究を進めるにつれて、生産性の推計の重要性や課題は、産業ごとに異なっていることが判明したからである。生産性の推計手法に関する検討を先に行った結果、計量経済学における生産性の概念と、独占禁止法で考慮される効率性との大きな隔たりをまず明らかにすることができた。この違いを研究期間の早い段階で認識しておくことは、競争と生産性の関係に関する先行研究を、法律家の目から批判的に分析するためには決定的に重要である。また、生産性の変動要因に関するいわば総論的な検討と、個別産業の競争実態に関する各論的な研究を同時期に行ったことによって、農業や地銀といった個別産業の分析で得た知見と総論的な知見とを、有機的に結びつけることができた。これは当初の研究計画では期待できなかったかもしれない進展であり、当初の計画以上の進展があると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり、次年度は当初の研究計画通りに推進する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に渡航を予定していた英国で新型コロナウイルスの感染拡大が続き、入国制限措置及び入国後の行動制限を行っていたため、現地調査を延期せざるを得ず、残額が生じた。海外調査が必要な研究及び調査は、感染収束の見通しを確認しつつ、研究期間の後期に実施する。
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Research Products
(5 results)