2020 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会における持続可能な医療提供体制構築と競争政策ー競争、連携、公私協働ー
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20K01330
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐藤 吾郎 岡山大学, 法務研究科, 教授 (20273956)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 医療提供体制 / 競争政策 / 持続可能性 / 地域インフラ産業 / 人口減少社会 / 独占禁止法 / 医療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度にあたる本年度は、研究の基礎を整備するため、わが国における医療機関間の業務連携に対する競争法の適用可能性について、文献調査を行うとともに、業務提携の実際について、岡山県内の医療法人経営者に対するヒアリング調査を行った。また、地域医療連携協議会の議事録の検討を通じて、その運用についての現状と課題を把握した。 さらに、本年度は、研究の基礎を整備するために、持続可能な医療提供体制の構築に関する法制度について、競争政策上の観点から、競争政策の視点からの法的枠組み、独禁法の適用に関する一般論、近時の規制改革の内容について、直面する課題、中長期的課題の検討を行った。特に、近時の規制改革における医師確保計画、外来医療計画、医療機器の効率的な活用に係る計画については、2020年度から運用が開始される制度であるため、運用の把握に努めた。また、直面する課題として、医療サービス提供主体間の連携の促進、医療サービスの提供方法(オンライン診療の導入)、投入要素の確保、計画行政の実施手法と実効性確保の4点について、検討を行った。さらに、中長期的な課題として、競争政策の在り方の再検討、医療提供体制における競争と持続可能性の関係、サービスの利用者の利益の確保の視点の必要性、持続可能性の阻害要因としての人口減少と競争政策の4点について検討を行った。本研究の成果としての政策提言を行ううえでの基礎的研究を成しえたと評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、上述の通り、研究の基礎を整備するため、当初の計画通り、わが国における医療機関間の業務連携に対する競争法の適用可能性について、文献調査を行うとともに、業務提携の実際について、岡山県内の医療法人経営者に対するヒアリング調査を行った。また、地域医療連携協議会の議事録の検討を通じて、その運用についての現状と課題を把握した。 さらに、本年度は、持続可能な医療提供体制の構築に関する法制度について、競争 政策上の観点から、競争政策の視点からの法的枠組み、独禁法の適用に関する一般論、近時の規制改革の内容について、直面する課題、中長期的課題の検討を行った。わが国法制度における考察の視点、課題の明確化をなしえたことは、本研究のわが国のおける理論的、実証的研究を進めるうえで、十分な成果を上げることができたといえる。 一方、比較法的手法による研究として、オーストラリアにおける医療提供体制と競争政策の関係について、ヒアリング調査を行う予定であったが、コロナ禍のため、渡航することができず、若干の文献調査にとどまっている。 本研究の進捗状況を総合的にみるならば、理論的、実証的研究については、予定以上に進捗していると評価しうるものの、比較法的研究については、やや遅れているため、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に行った持続可能な医療提供体制の構築と競争政策に関する研究については、まず、2021年度に、現状と課題について、検討を行い研究成果として邦文として公表する。さらに、わが国における法制度の考察として、予定通り、研究成果を英文で公表する。さらなる研究としては、米国における法制度の研究を行うとともに、初年度の研究に過程において、明らかとなった競争政策と持続可能性についての研究の現状と課題について、OECDにおける文献の調査も含め、行っていく。
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Causes of Carryover |
初年度において、オーストラリアにおける競争法の適用可能性、個別の政策課題(医師の確保、医療機器の購入等)に関する規制(連邦法、州法)、協議会方式の採用の有無等について文献調査を行ったうえで、メルボルン市にあるMonash Health(職員数1万6000人、事業規模1400億円の地方病院ネットワーク)を訪問し、業務連携の実態、医師の確保、医療機器規制等についてのヒアリング調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症防止のため、渡航することができなかったため、次年度使用が生じた。渡航が可能となり次第、従来の計画に従って、使用する予定である。
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