2021 Fiscal Year Research-status Report
デジタル化時代の労働者の損害賠償責任、能力不足や病気等による解雇等の日独比較研究
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20K01331
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
細谷 越史 香川大学, 法学部, 教授 (60368389)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 労働者の損害賠償責任 / 解雇 / 日独比較 / 能力不足 / 病気 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、本年度において、第4次産業革命による労働環境のデジタル化や成果主義的人事管理の強化などを背景に増加傾向にある、使用者から労働者に対する損害賠償請求や人的理由(勤務成績不良や病気など)による解雇などに対する法規制のあり方をめぐり、従来の一般条項(信義則や権利濫用)などに依存した総合判断を克服し、むしろより具体的な原理・原則に基づく明確なルールとして再構築するための解釈論等の解明に取り組んできた。その際、ドイツ労働法との比較から、日本法を再検討する際に有用な示唆を導き出すよう試みた。 具体的な研究実績としては、コンメンタールや判例評釈において、労働者の損害賠償責任の制限法理や労働者から使用者に対する「逆求償」の法理の再検討に従事した。また、この課題との関連で、コンメンタールでは、損害賠償予定の禁止(労基法16条)等をめぐる判例・学説の整理・検討も行った。さらに、ドイツにおける勤務成績不良や能力不足(ローパフォーマンス)を理由とする解雇法理の研究にも取り組み、その成果を大学紀要において順次公表を開始することができた。また、日本の勤務成績不良等をめぐる解雇の法理を紹介・検討した論文をドイツの法律・経済系専門誌に公表することができた。くわえて、ドイツにおけるデジタル化が解雇法理に及ぼす影響を考察したドイツ語論文を日本語に翻訳して紀要に発表することができた。この他、ドイツ・ハンブルク大学等共催の国際的なシンポジウムにおいて、日本の職場におけるセクシャル・ハラスメント法理について、日本側のパネリストとしてドイツ語にてプレゼンテーションを行い、他の国際的なパネリスト達と共にこのテーマをめぐる議論にリモートで参加することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のためドイツの研究者らとの意見交換や現地調査が難しかったことなどから、第4次産業革命がドイツや日本の労働環境や労働法に及ぼす影響について分析・評価する作業が少し遅れている。また、ドイツにおける勤務成績不良や能力不足を理由とする解雇の法理をめぐる日本労働法学会での個別報告に応募し内定済みであるが、応募者が多数であったため、当初予定より遅れ令和5年度に実施することが決定されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、第4次産業革命が日本やドイツの労働環境や働き方、そして労働法に及ぼし得る影響についての分析・検討を急ぎ(ドイツの研究者らとのリモートでの研究会や意見交換の実施等を含む)、その検討結果をふまえて、労働者の損害賠償責任、勤務成績不良や能力不足を理由とする解雇、さらに病気を理由とする解雇や変更解約告知などの規制のあり方を再検討する予定である。また、こうした研究内容を比較法の対象たるドイツ語でプレゼンテーションをしたり、ドイツ語などで公表することなどを通じて(状況によってはリモートを含む)、国際的に評価される研究にも発展させる所存である。なお、今後はドイツでの研究滞在を予定しているが、コロナの感染状況や大学の方針などもふまえて慎重に判断する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主要な理由としては、コロナ禍を受けた国や大学等の出張や海外渡航をめぐる方針により、国内での研究会出張や海外での研究滞在等がほとんど実施できなかったことを挙げることができる。次年度は、仮にコロナの感染状況が好転し、国や大学等の対策が緩和され、学術団体の方針が変更されれば、次年度使用額を研究会出張や海外での研究滞在等に活用させていただく予定である。なお、コロナの感染状況の改善が見込まれない場合は、海外での研究滞在や調査の不実施を補うため、ドイツ法関連の研究書や雑誌あるいはドイツ法系の電子ジャーナルなどを当初予定より多く活用することで、不足する学説・判例などの情報量を補わせていただく予定である。
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Research Products
(7 results)