2021 Fiscal Year Research-status Report
「雇用によらない働き方」の歴史的位置と労務供給契約に対する労働法的規制の課題
Project/Area Number |
20K01338
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石田 眞 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 名誉教授 (80114370)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 労働法 / 労務供給契約 / 雇用によらない働き方 / フリーランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、<企業組織の変動>と<就業形態の多様化>という2つの視角から導かれる「労務供給契約に対する労働法的規制の3段階モデル」を使用し、現在問題となっている「雇用によらない働き方」の歴史的位置を検討するとともに、それを踏まえて、民法において雇用・請負・委任という名称が与えられている労務供給契約に対する労働法的規制の今後のあり方を検討するものである。 令和3年度においては、主として、第3段階(21世紀)における労務供給契約に対する労働法的規制のあり方の検討を、労働法による規制の可能性と限界という観点から行った。とくに「雇用によらない働き方」を象徴するフリーランスの法的保護について、2021(令和2)年3月26日に公表された『フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン』(内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)を批判的に検討した。この『フリーランスガイドライン』は、競争法によるフリーランスの法的保護を目指すものであるが、批判的検討の結果、①競争法による保護だけでは不十分であること、②多様なフリーランス全体を労働法的な保護の射程に収めるためには、いわゆる「労働者概念」の見直しが必要であること、③その際には、現行労働法の外延を画する「基底的労働者」を「他者に自ら労務を提供してその対価で生活する者」と定義するとフリーランス全体が労働法的規制の射程に入ること、を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当面する研究課題との関係から、2022(令和4)年度に遂行する研究と2021(令和3)年度に遂行する研究を入れ替えたので、全体としては、やや遅れが生じてしまった。その原因は、当初の計画において、2021(令和3)年度計画に多くのことを盛り込み過ぎたからである。 今年度においては、上記計画を再整理し、全体として、最終年度である今年度一杯で研究を完遂できるようにしたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、2つのことを課題とする。 1つは、「雇用によらない働き方」の歴史的位置を、<労務供給契約に対する労働法的規制の3段階モデル>にしたがい、検討することである。具体的には、当該<3段階モデル>の第1段階(19世紀)から第2段階(20世紀)の初期にかけての労働法的規制(鉱業法と工場法)に続いて、第2段階中期から第3段階(21世紀)にかけての労務供給契約に対する労働法的規制の展開過程を検討する。 もう1つは、第3段階(21世紀)における「雇用によらない働き方」を象徴する自営業者やフリーランスについて、プラットフォームワーカーも含めて、それらの者の労働法的規制のあり方について、比較法的な観点も加味して、検討することである。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2021(令和3)年度に参加予定であったポーランド・ワルシャワでの国際会議が、コロナウイルスの国際的な感染拡大により、延期され、外国出張旅費を支出できなかったためである。 大学による渡航規制の状況と相手国の受入れ状況にもよるが、今年度においては、何としても、国際会議への参加あるいは外国での比較法的調査を実現し、それによって、使用を行いたいと考えている。
|
Research Products
(3 results)