2021 Fiscal Year Research-status Report
AI等利用行為のもたらす競争法上の課題と規律枠組みの解明
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20K01339
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
瀬領 真悟 同志社大学, 法学部, 教授 (90192624)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会法学 / 経済法 / AI / 共同行為 / 意思の連絡・協調行為 / 是正措置 / EU競争法 / パーソナライズドプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はAI等の利用行為のもたらす競争法上の問題への規制のうち、共同行為規制の可能性と限界解明を主たる課題としつつ、前年度研究課題に関する補完追加研究及び次年度以降の研究準備に資する資料収集など各種作業を行った。 研究計画上の第1課題は、複数企業間競争制限行為とされる場合と合理的利潤最大化行動や効率的な場合との識別基準、及び識別のための考慮要因の検討である。共同行為に関連して幾パターンかのAI利用行為の分類が行われ、それに応じた識別基準や考慮要因を構成する対応さらには検討すべき問題点が認識されていることが確認できた。第2課題は、現在のカルテル規制理論と実務(意思の連絡や反競争効果と正当化事由)でのAI等利用共同化の捕捉可能性である。これについてはEU法での規制の展開と照らし合わせ、第1に、現行のカルテル規制法理では捕捉困難なAI利用にかかわる規制理論の新思考・試行について検討ができた。第2に、現行カルテル規制法理のもと規制可能なAI利用についても特有の課題を認識整理することができた。第3課題は、措置命令に際して競争当局の執行上の課題と解法の検討である。現行規制法理のもと可能な措置とその限界の認識はできたものの、より適切な措置等についての展望が未だ模索中であり、方向性や枠組みの認識について課題が残る。 前年度課題との関連では、一方的行為としての規制のうち、パーソナライズドプライシングなど価格設定行為についての検討を行うことができた。 次年度以降の研究準備については資料収集を行うとともにこれまで公刊された規制当局の報告書等の文献を検討することで次年度以降の研究の準備を行えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画で想定した各項目については満遍なく研究が遂行できた。 ただし、コロナ禍の影響により予定した文献入手に遅延が生じたこと、及び前年度に引きつづき現地調査ヒアリング実施が困難であったことなどにより各項目の研究の深みについて、再確認を要し、追加的な検討を要する可能性があると認識をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は過去2年間の研究内容の補充研究を行うとともに、各国での競争法と他法領域規律の機能分担・基本枠組み形成のための課題明確化や解決法の考慮要因を検討する。それに向け研究計画に提示した3つの課題として、(1)情報(保護)・(2)差別禁止平等取扱・(3)消費者(保護)法・政策を対象とし、計画で示した観点から(1)(2)を中心に(3)を補完とする。研究手法としては、申請で示したように文献研究を中心にする。コロナ禍の影響により欧米の研究者との対面でのインタビューや研究大会への対面参加への困難さはあるものの状況は改善しつつあり、オンライン開催のものとともに、可能な限りそれらの機会を利用して本研究に役立てる。
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Causes of Carryover |
(理由) 主にコロナ禍を理由にして、当該年度及び次年度利用予定の研究文献の発刊及び配送遅延が生じたこと、対面での調査実施が不可能または実施困難が生じたこと、から予定していた予算執行ができなかったため。 (使用計画) 発刊及び配送遅延等の対象となった研究文献の購入を行い、コロナ禍の状況改善に応じて対面での調査を迅速に行える体制を整える。状況改善が見込めず対面調査の困難さが継続する可能性を想定しその場合には次年度以降の文献購入を前倒しする準備と購入を進める。
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