2022 Fiscal Year Research-status Report
AI等利用行為のもたらす競争法上の課題と規律枠組みの解明
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20K01339
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
瀬領 真悟 同志社大学, 法学部, 教授 (90192624)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会法学 / AI / 消費者保護法 / 差別禁止法 / 情報保護法 / 自主規制・共同規制 / 事前規制 / ソフトロー |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、競争法と他法領域規律の機能分担・補完性枠組み構築の課題明確化と解決法の考慮要因の検討を中心とし、前年度までの研究課題への補完追加研究、次年度研究に資する資料収集や検討作業を行った。 研究計画で取り上げた(1)情報(保護)・(2)差別禁止平等取扱・(3)消費者(保護)法・政策については、個別具体的な独自の法制定の展開は十分には見られていないものの、既存法制活用により一定程度の捕捉を行う試みを確認し、この局面では、競争法との機能分担・相互補完的役割を確認できた。他方それにとどまらないより包括的規律の展開と必要性とを確認した。第一に、AI利用を含む行為を対象として行為の外形や行為者に注視し規制を行うことの展開と内容確認である。第二に、AIの動作による人の認識操作・行動変容効果などについての規制必要性と困難さが考慮要因とされ、その取扱いの検討の確認である。第三に、国による指揮命令的法規制のみならず、代替的規律手法(自主規制・共同規制・事前規制・ソフトロー等)が適切な場合が、政策立案や法規制の際に認識されていることが確認できた。AI利用行為に関わる規制においては、(1)(2)(3)を視野に入れて検討するとしても従来型の規制手法ではない、規律手法を視野に入れながら検討を要することが認識できた。この点に関しては、前年度までの検討課題である競争法による規律・規制検討時にも同様である。 前年度までの検討課題の補完追加研究としては、このような規制手法の多様性・多重性を視野に入れると、既存法による規律がカバーできる範囲と限界、あるいは、より効果的・効率的な規律のために必要な考慮事項検討事項が見えてきたということがいえる。 次年度とりまとめ準備としては、現行法規による規律の範囲と限界及び多様な規律手段の認識と確認の研究にとりかかれたことで、有意義な準備作業を行えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画で想定した各項目については満遍なく研究が遂行できた。また、研究とりまとめ上有意義な知見を得ることもできた。 ただし、コロナ禍の影響により予定した文献入手に遅延が生じたこと、及び前年度に引きつづき現地調査ヒアリング実施が困難であったことなどにより各項目の研究の深みについて、再確認を要し、追加的な検討を要する可能性があると認識をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、規律の理論枠組みと法執行上の課題解明、わが国への示唆を狙いとして研究のとりまとめを行う。AI等利用行為への競争政策・競争法規律の整理とわが国への示唆を得るため、EUと米国を対象とし、両法域の異同を視野に入れ、各アプローチの意義明確化を図り、AI等利用各種側面への競争政策・競争法規律枠組みを明確化する。これを出発点に規律中で競争政策・競争法と他規律との役割・機能分担を提示すとともに、より包括的な規律のあり方、法規制以外の新たな規律方法のあり方をも視野に入れた法規率のあり方を提言する。研究方法としては、文献研究を基本とし、補完的にインタビュー調査を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)書籍などの物品購入上為替計算などでの取扱で生じたものである。 (使用計画)次年度の予算執行上計算上の問題が起きないよう留意して執行する。
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