2023 Fiscal Year Annual Research Report
AI等利用行為のもたらす競争法上の課題と規律枠組みの解明
Project/Area Number |
20K01339
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
瀬領 真悟 同志社大学, 法学部, 教授 (90192624)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会法学 / AI / 共同行為 / 暗黙の合意・協調行為 / 一方的行為 / 情報法 / 包括規制 / 日米EU競争法 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの検討を踏まえAI等利用行為への競争政策・競争法規律の整理とわが国への示唆を得る研究を行った。 共同行為・一方的行為・企業結合の各規制も規制可能性と限界の理論的検討と課題が認識されている。実務的展開は、共同行為規制での明示的及び暗黙の合意規制の範疇で取り込み可能なAI利用行為規制で見られる。EU・米国ともにカルテル実施手段としてのAI利用規制例はあるが、AIの共通利用を媒介とする協調行為=暗黙の合意規制はハブアンドスポーク的枠組みでの米国の取組が近年顕著である。一方的行為や企業結合規制では、AIの存在・利用を含む排除行為等や市場構造変更後の競争変化に焦点を当てた規制は展開しているが、AIの存在や利用自体よりも、それを背景としたものである。現時点で、消費者法等の規律は競争法と相互補完的関係にある。しかし、限界が意識されていると思われるEUを先頭とし包括的AI規制法が展開しており、適切な規制内容や規制手法が模索構築されつつある。他方、AIへの介入のあり方をめぐっては米国等で、リスクに警鐘をならしつつも技術革新による利便性への過剰介入の懸念もあり、包括規制と技術革新促進等とのバランスが模索されている。包括規制法策定枠組みと個別法対応枠組みがあることが明らかでとなり、競争法と他の法規制との関係もその枠組み決定に応じて考えられねばならないことを把握した。 我が国への示唆は以下の点である。個別法規制による規制上の課題があり、対応策は、包括規制法枠組み追求と個別法対応追求だが、後者の限界は明らかである。個別法対応の充実を模索しつつ、包括規制法も追求し、両者によりバランスのとれたAI規制を確立し、日本社会や日本法の状況を踏まえた具体的な規律内容と規制手法の確立が必要である。
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