2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K01352
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金澤 真理 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (10302283)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 性的自由 / 盗撮 / 再犯防止 / 性的プライヴァシー / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続きウィルス感染拡大防止への対応の一環として、研究実施方法が制限されたため、2021年度も研究計画を一部見直し、性的プライヴァシーの法的保護に関する比較法的分析の素材については、文献資料を主体として収集、分析に努めることとした。特に、性刑法改正に関し、先行する比較法研究を参考にして、欧米の盗撮立法に関する議論状況の整理に着手した。 日本の議論状況の分析枠組みを設定するために、強制わいせつ罪の成立には犯人の性的意図が必要であるとする従前の最高裁の立場を変更し、被害者の受けた性的な被害の有無やその内容、程度に着目すべきであるとし、また、その被害については、「社会の受け止め方」を踏まえなければならないと判示した最高裁大法廷判決(2017(平成29)年11月29日)を手がかりとして、弱者に対し非対称な関係を利用して犯されることが少なくない性暴力犯罪の分析に、ジェンダーの視角を取り入れて分析を加え、討議に付した。ジェンダーの視角は、性犯罪に対する従来の伝統的な見方を転換し、上記最高裁大法廷判決の言う「社会の受け止め方」の枠組みを活かして、弱者の被害の存在を可視化することに有効ではないかと考えられたからである。この検討成果は、本課題研究の一部として、公刊した。 上記の検討の過程で、ジェンダーの視角は、暴行、脅迫を手段とする性暴力犯罪の法益を、人の尊厳に見出し性犯罪の共通の法益を探ろうとする見解とも親和性があるとの示唆を得た。暴力的手段を伴わないプライヴァシー侵害にも、かかる法益設定が可能かについて、論証を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大防止への全学的対応の一環として、所属研究機関が研究活動の制限を継続しているため、なお研究実施の方法が制約され、当初計画したような進捗を得られていない。文献資料の収集を進めるとともに、オンラインによる打ち合わせの機会を活用しているが、実態調査が未だ実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
強制わいせつ罪の法益と、その成否の基準に関する理論的考察を経て、暴力的手段を用いる性犯罪の法益たる性的自己決定、性的自由の内実について、ジェンダーの視角から批判的検討を加えた。ジェンダーの視角は、単なる性別による形式的区分を超え、ノンバイナリーの場合にも要請される性的プライヴァシーの概念を説明するキーワードになりうる。そこで、人の尊厳に由来する性に対する刑法的保護の必要性を論証することを試みる。外部状況に応じて研究計画を修正し、文献資料の分析により得られた視座に立ち如何なる検証が必要かを精査し、実態調査の要否についても検討する。
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Causes of Carryover |
新型ウィルス感染拡大防止の全学方針に従い、当初の計画どおりに研究を進めることができなかった。また、対面の方法で直接聴き取りを行うはずであった調査等ができなかったため、当初予定していた旅費、謝金等の支出ができなかったため、改めて研究計画を見直して再検討する。
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