2021 Fiscal Year Research-status Report
捜査におけるDNA型データの収集・保管・利用に関する手続的規制の比較法的研究
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20K01358
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
岡田 悦典 南山大学, 法学部, 教授 (60301074)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | DNA型データベース / 捜査 / 強制採尿 / DNA型鑑定 / 任意捜査 / 強制捜査 / 刑事訴訟法 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA型データベースの捜査における利用について、アメリカ合衆国の2013年King v Maryland判決を中心に、判例の意義と射程、その論理の特徴、さらには残された課題としての「捨てられたDNA採取」の問題に関する判例の分析、州立法の状況について、分析結果をまとめることができた。また、それを踏まえて、わが国のDNA型データベースの活用に関するここ20年ほどの動向を簡潔にまとめることができ、特に刑事司法改革における立法過程での議論の動向と現状を明らかにした。この結果を、「アメリカ合衆国における被逮捕者に対するDNA捜査とその規制-連邦最高裁Maryland v. King判決を中心として― 」南山法学45巻2号89-150頁(2021年)として、公表することができた。この検討を踏まえて、次に、2021年度末頃から、イングランド・ウェールズに動向の過程の資料の読み込みを始めている。合わせて、いわゆる「体液」の証拠収集における捜査法のあり方として、強制採尿を巡るわが国の判例法理の現代的意味づけをする必要があるとの発想に至り、特に、強制採尿を捜索差押令状によって可能とした最決昭和55年10月23日刑集34巻5号300頁と、その周辺における議論状況、身体に対する捜索・検証のあり方を巡るわが国の学説の変遷についても、検討を開始した。また、任意捜査における被疑者の留め置きの問題も関連していると思われるので、最決平成6年9月16日刑集48巻6号420頁の意義とその後の判例の展開についても、検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ合衆国の判例・議論の整理については、その対象領域が多岐にわたるので、なかなか進展を進めるのが難しいと思われていたが、どうにかそれを一つの論文としてまとめ、公表することができた。この点が、概ね予定通りの進展であると思われる理由である。しかし、コロナ禍の影響のため、海外調査をすることができず、さらに突っ込んだ検証をすることも必要であり、この点が、全くもって順調であるとは言えない大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
イングランド・ウェールズの動向を検証し、まとめることである。主に次の部分にまとめて段階的に検討する予定である。①DNA型鑑定の登場とDNA型データベースが進展した1990年代から2000年代初頭までの議論の動向、②被逮捕者のDNA型資料の採取につき、イングランド・ウェールズの法制度を違法としたヨーロッパ人権裁判所の2008年S and Marper v United Kingdom判決の検討、③この判決の前後に話題となった立法過程の分析、特に2012年保護と自由法の制定過程の分析、④その後のDNA型データベースの利用とプライバシー保護に関する運用・判例などの分析、に分けることができる。合わせて、体液捜査に関する旧来のわが国の判例法理の再検討を行い、特に、任意捜査における留め置きの問題の限界性について、検討を加えることを、方策として考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた研究出張が難しくなった、あるいは対面での学会・研究会開催がなくなったことから、旅費を利用する機会がまったくなくなってしまったことが原因である。
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