2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K01360
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 周平 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10520306)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 不法行為法 / 無過失責任 / 厳格責任 / アメリカ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツ法およびアメリカ法を対象としつつ、いわゆる無過失責任(自己の過失行為を要件としない責任)に関する基礎的検討を目的とするものである。 2021年度は、主としてアメリカ法の検討を行った。特に重点的に検討したのは、「第3次不法行為法リステイトメント:物理的および精神的損害についての責任(Restatement (Third) of Torts: Liability for Physical and Emotional Harm)」20条に定められた、異常に危険な活動(abnormally dangerous activity)についての厳格責任である。同条による責任について、リステイトメントの注釈を参照しつつ、その正当化根拠と要件について、関連するアメリカ法上の議論と併せて検討した。また、ドイツ法における危険責任と比較した際に特徴的とみられる点(「活動」が要件となる点、予見可能性が要求されている点、および一般的慣行(common usage)について厳格責任が認められない点)について一定の考察を行った。以上については、既にほぼ論文としてまとめており、2022年度半ばまでには公表される見込みである。 アメリカ法それ自体の検討のほかには、広義には無過失責任の一種ともいえる使用者責任に関連して、被用者から使用者に対する求償(いわゆる逆求償)を認めた近時の重要判例(最判令和2年2月28日民集74巻2号106頁)を検討し、その成果を公表した。そこでは、使用者責任の帰責原理・帰責構造との関係で、逆求償の正当化可能性について検討するとともに、逆求償と改正民法の規定との関係についても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ、アメリカ法上の議論に関しては、第3次不法行為法リステイトメント20条とそれを巡る学説上の議論について、一通りの検討を行うことができた。また、その過程において関連するドイツ法上の議論についても一定のリサーチを行うことができ、当初の計画とはやや順序が異なるものの、全体として必要な検討を着実に進めることができている。以上の理由から、「おおむね順調に進展している」ものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、引き続きアメリカ法の検討を行う予定である。2021年度は第3次不法行為法リステイトメント20条および関連する学説の検討を中心に行ったが、2022年度は、アメリカ法に関する文献をより広く渉猟するとともに、第1次および第2次不法行為法リステイトメントにおける対応する規定についても考察する。また、これまで不十分であったアメリカの判例の検討も、可能な限り広く行いたい。さらに、アメリカ法における厳格責任ルールの起源であるイギリス法についても、判例の展開を中心に検討する。
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Causes of Carryover |
2020年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の流行により、勤務校外における意見交換・資料収集等が困難となり、予定していた旅費を全く使用することができなかった。これについては、書籍を中心とする物品の購入費用のほか、旅費として適宜使用していく予定である。
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Research Products
(3 results)