2020 Fiscal Year Research-status Report
How can we create workable proceedings for arranging issues in civil litigations?
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20K01362
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菱田 雄郷 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90292812)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民事訴訟法 / 争点整理手続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民事訴訟における争点整理手続が機能不全に陥っているという問題提起が実務家からなされているという現状に鑑み、かかる機能不全を解消するための方策を検討することを目的とするものである。 争点整理の機能不全の理由としては様々な点が指摘されるが、本研究が注目するのは、争点整理手続での発言が自らに不利に働き得るため、踏み込んだ発言がしにくい、裁判官が争点整理手続のリードに必ずしも積極的ではない、という2点である。本研究の1年目にあたる令和2年度には、主として、前者の側面について若干の準備作業を行った。 争点整理手続での発言が不利になり得る要因としては、①相手方の主張を認めたことが裁判上の自白として拘束力を持ち得ることと、②争点整理手続での発言が、弁論の全趣旨として、裁判官により、後々不利に斟酌され得ること、が挙げられる。もっとも、①については、弁論準備手続における主張は、裁判上の自白になり得ないという説があり、その当否が問題になるし、②については、口頭弁論ではない弁論準備手続における発言が、「弁論の全趣旨」として斟酌される理路が明らかではないという問題がある。 そこで、この2点について、若干の検討を加えたところ、暫定的なものではあるが、前者については、弁論準備手続においては一律に裁判上の自白は成立しない、という帰結は支持し得ないのではないか、という見通しを、後者については、弁論の全趣旨が裁判官の心証に影響を与えるメカニズムから見て、弁論準備手続における発言が直接的に裁判官の心証に影響を与えるということはないのではないか、という見通しを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は綿密な文献調査と国内外の実務家からの情報収集によって遂行することを予定していたところ、昨今の社会情勢から、後者の実務家からの情報収集は実際上難しく、前者の文献調査についても制約がなくはなかった。しかし、「研究実績の概要」においても述べた通り、本研究の中心的論点2つのうち、1つについてはある程度の見通しを立てることができたので、3年計画の1年目としては、順調な滑り出しであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨今の社会情勢から、種々の制約はあるものの、文献調査については相対的に支障は少ないであろうから、この作業は継続して続けていく予定である。とりわけ、1年目には手をつけることができなかった、「裁判官の争点整理における役割」についての理論的な研究に2年目は着手する予定である。また、1年次にはできなかった、内外の実務家からの情報収集も実施したいが、これはその時の社会情勢次第である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、国内外の出張の計画を全て見直さざるを得なくなったこと、発注した洋書のうち年度内に到着しなかったものが何冊かあったことが主たる理由である。 次年度使用額は、①令和2年度に予定していた出張の費用と、②令和2年以前に公刊されたものも含め、本研究に関連する文献(とりわけ洋書)の購入費に充てる予定である。ただし、社会情勢次第では、①の費用を②の費用に振り替えることがあり得る。
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