2023 Fiscal Year Research-status Report
民事訴訟手続における新種証拠の現状、将来課題と証拠法理論の交錯
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20K01365
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
杉山 悦子 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (20313059)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 民事裁判のIT化 / 電子証拠 / 電子文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度においては、2022年度の民事訴訟法の改正によって民事裁判手続がIT化されたことに伴い、電子的な証拠の取り調べの規定が新たに整備されたことを受けて、法改正の意義や課題、今後の運用のあり方などについて、これまでの国内における電子的な証拠の手続法の位置づけをめぐる議論を整理し、比較しながら検討を行った。そして、これまで民事訴訟法上の準文書として取り扱われてきた証拠と、その範疇から外れて書証や検証で取り扱われてきた証拠を区別する理論の合理性や、改正法の下でこれらの理論がどのように応用されるのか、また、高度に複雑化する証拠の取り調べにおいてどのように専門家を関与させるのかといった問題について、他の研究者や実務家と意見交換を行い、その結果を発表した。また、民事訴訟手続のみならずそれ以外の手続においても、IT化によって電子的な証拠がどのように取り扱われるのか、また、訴訟記録などの文書がどのように取り扱われるのかについても比較分析を行った。 さらに、電子的な証拠の取り調べのみならず、これを含めた証拠収集手続のあるべき姿や裁判官による調査のあり方について、様々な研究会に参加をするなどして実務家や研究者から現状を聞いたり、意見交換を行ったりした。 以上に加えて、日本国内の電子的な証拠をめぐる現状や課題及び考えうる規律について研究した結果を、中国の学会で報告し、中国の研究者らと意見交換を行った。それにより、電子的な証拠についての日本の規律を客観視し、改ざんへの対処方法などについての問題意識を共有した。また、イギリスにおける民事裁判手続のIT化の状況や、電子的な文書や証拠、記録の取扱いについて実態調査を行い、コロナ禍以降の手続の変化や課題を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内の電子的な証拠の研究については、おおむね順調に進められてきているが、海外の状況の調査については、2022年度以前からのコロナ禍の影響によって文献収集、実態調査ができるようになった時期が後ろ倒しになったため、全体的な研究計画の実施に遅れが生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
海外、特に英米における民事裁判手続のIT化とそれに伴う電子的な証拠の取扱について、文献調査、実地調査を進め、これまでに明らかにした国内の制度との比較分析を行い、課題を克服するための検討を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で国内外の調査が開始できる時期が後ろ倒しになったために、書籍や物品の入手の時期が遅れたり、国内外の調査のための旅費、結果の分析に必要な人件費や翻訳費等の使用時期が全体的に遅れた。次年度は国内外、特に海外の状況を調査するための旅費や書籍や物品の購入、分析や成果報告の補助のための人件費や翻訳費等に使用する計画である。
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