2021 Fiscal Year Research-status Report
アクセスプロバイダ等の媒介者に対する差止めの法的根拠に関する比較法制史的研究
Project/Area Number |
20K01371
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
坂口 甲 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (20508402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 昌裕 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (30609863)
粟辻 悠 関西大学, 法学部, 准教授 (50710597)
佐々木 健 京都大学, 法学研究科, 教授 (70437185)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 妨害者責任 / 差止め / 物権的請求権 / サイトブロッキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究グループは、法制史を担当するグループと現行民法を担当するグループに分けて本研究を遂行してきた。 ドイツ法では、アクセスプロバイダに対する差止請求権は、所有権に基づく妨害排除請求権について定める民法1004条1項の類推適用に基づき認められてきた。ドイツの判例によれば、差止請求権の相手方である「妨害者」を日本法よりも緩やかに認める一方で、妨害者とされた相手方の義務内容は、基本権衡量を読み込んだ期待可能性要件によって限定されている。これに対して、所有権の妨害が問題となる民法1004条1項の直接適用事例に目を転ずれば、ドイツの判例は、「妨害者」を日本法に比べて限定しようと腐心する一方で、相手方の義務内容を広く捉える傾向にある。近時の判例は、妨害者概念を限定するために、妨害者に安全確保義務違反という意味での帰責事由のあることを要求しているが、この安全確保義務は、債務法上の社会生活上の義務よりも広いものとされている。また、直接適用事例では、類推適用事例とは異なり、期待可能性による義務内容の調整はみられない。 法制史グループは、妨害排除請求権のルーツの1つである未発生損害担保問答契約について、主として、河川氾濫によって下流に流された物の除去をめぐる事例を念頭に置きつつ、関連法文および先行文献の収集と読解作業を行った。これに関連して、工事等による道路の通行妨害について、所有権の妨害と類似の妨害排除請求の研究を行った。道路には、市民法上の占有も所有も存在しないため、誰が妨害排除請求の原告適格を有するのかが問われることとなったほか、誰を相手方とすべきか、妨害の停止だけではなく、原状回復まで請求できるか、誰が原状回復費用を負担すべきかなど、現代における所有権に基づく妨害排除請求と同様の問題が生じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
両方の研究グループにおいてそれぞれ分担課題の研究が進められ、いくつかの課題については、研究会で報告し、また、論文を公にすることができた。また、研究グループ相互の意見交換も月に1回程度のペースで行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の影響により、特に海外での研究発表の機会や意見公開の機会が大きく制約される可能性がある。オンラインで実施ができないものについては、海外での研究活動を延期するなど、柔軟に対処することとしたい。
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Research Products
(7 results)