2022 Fiscal Year Research-status Report
債権の担保化による資金調達と 、担保の機能、担保の効力の内実・外延の、重層的分析
Project/Area Number |
20K01372
|
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤井 徳展 大阪公立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (40381975)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 債権担保化 / 集合債権譲渡担保 / 将来債権譲渡 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度中は、研究計画所掲の主題のうち、担保の効力の分析(債務者・担保設定者の通常段階の法律関係から危機段階の法律関係までの分析)を、令和2年度、3年度に引き続き進めた。 とくに、令和4年度には、担保法制の見直しについて、法制審議会担保法制部会(令和3年諮問第114号)における審議が進展して、担保法制の見直しに関する中間試案(令和5年1月。以下、「中間試案」という。)の公表をみた。これは、本研究との関係でも、重要な意味をもつ。そこで、研究の主な柱の1つとして、中間試案における規律の内容について見通しをつけることとした。そして、その多数の規定群のうち、立法の手法(担保目的取引規律型か、担保物権創設型か等)、担保の手法(動産、債権の種類別の制度か、統一的な制度か等)にかかる部分を切り分けたうえで、動産、債権の包括的な「担保化」にかかる従来の説明をふまえつつ、在庫動産、売掛債権、預金債権(口座)の担保化というモデルで、とくに、債権譲渡担保をめぐる法的諸問題 ── 設定・対抗、期中管理と、設定者倒産に焦点を合わせて、試案の要点を浮かびあがらせることができた(「設定、対抗要件、競合における優劣決定」につき、既存の、民法467条または動産債権譲渡特例法の債権譲渡の対抗要件によること、また、対抗要件具備の衝突の問題として処理すること。「担保設定者の取立権限、担保価値維持義務」につき、当事者の意思なのか、担保としての典型なのか、どこに基礎づけられるのかが問題となること。「設定者倒産、否認」につき、将来債権の譲渡の構造分析が基礎になること、など)。以上については、「大阪公立大学民法研究会」(令和4年度第6回)にて、「担保法改正と、債権譲渡担保をめぐる法的諸問題」と題して報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和4年度が本研究計画年度最終年度であったが、本研究の遂行に時間を要するという状況に変わりがなく、加えて令和4年は、主として講義準備等の学内業務に時間を多く割かざるを得なかった(「5.研究実績の概要」所掲のように、大阪公立大学民法研究会における報告ができたにとどまる)。それゆえ、現在までの進捗状況は、遅れているといわざるを得ず、完遂にはまだ時間を要する(なお、補助事業期間の1年間の延長については、学振承認済みである)。
|
Strategy for Future Research Activity |
「7.現在までの進捗状況」所掲のように、令和4年度が本研究計画年度最終年度であったが、本研究の完遂にはまだ時間を要する。(本来の)研究計画年度に引き続き、補助事業期間の1年間の延長期間内に、研究計画所掲の主題のうち、担保の効力の分析(債務者・担保設定者の通常段階の法律関係から危機段階の法律関係までの分析)を中心に、「大阪公立大学民法研究会」等で研究の経過を報告するなどしたうえで、大阪公立大学法学雑誌のほか、各種媒体において、研究の成果を公表する。本研究を令和5年度の1年間延長したものの、令和4年度の最終年度中に法制審議会担保法制部会の中間試案の公表があった。法制審議会民法(債権関係)部会(平成21年諮問第88号)の例を参考にするならば、担保法についても改正法施行までに様々な動きがあるとみられることから、本研究の延長をむしろ好機ととらえて、積極的に研究をすすめていきたい。
|
Causes of Carryover |
令和4年度も、令和3年度までの研究年度2年間と同様、旅費を予算項目としてあげたうえで、令和4年度の予定としてとくに海外におけるシンポジウム参加、資料収集・調査等を計画していた。しかし、結局年度末に至るまで、海外渡航によるこれらの行動の機会を得ることができなかった。結論として、令和4年度は、物品の予算項目のみで、ほとんどが図書購入による執行であった。 令和4年度が本研究計画年度最終年度であったが、令和3年度段階で進捗がやや遅れていたことから、本研究の補助事業期間を延長することを予定していた(科学研究費助成事業[学術研究助成基金助成金]実施状況報告書〔令和3年〕に記載)。それゆえ、令和4年度での執行完了を見送った。そして、実際に令和5年度の1年間、研究期間を延長した。 令和5年度も、令和4年度までの研究年度3年間と同様、旅費を予算項目としてあげたうえで、国内外の、担保法かかるシンポジウム、学会、研究会等が対面で開催されるときに執行予定である(本研究では、担保法にかかる最新の議論状況に常に触れることが不可欠である)が、なお状況次第である。いずれにしても、期間延長による最終年度であるから、旅費として執行しない場合には使途を物品(主として図書購入)へと振り替えて執行を完了する(本研究期間全体を通じて、本学法学部資料室に配架する形で、和書・洋書の購入・収集を継続することが不可欠である)。
|